【田原】医療や介護のほうはどうでしょうか。
【坂根】国民は社会保障費が膨らんで危ないことに薄々気づいていますが、いざ選挙になると、手厚くするほうを求めますよね。それは現状がきちんと「見える化」されていないからだと思うのです。ならば私もきちんとデータを確認してみようと思い、小松市と私の出身地である島根県浜田市に、社会保障費のデータを教えてくれとお願いしました。すると、どういう答えが返ってきたと思いますか。「そのようなデータは即答できません」ですよ。
【田原】えっ、本当ですか。
【坂根】はい、国から知らされていないのです。結局回答までに約1カ月がかかったのですが、出てきたデータを見て、さらに驚きました。浜田市の年間の年金や医療・介護を合わせた社会保障費の総額は一般会計予算に対して20%も多い金額でした。小松市も社会保障費総額は、市の予算に対して約40%多いことがわかりました。軽く年間予算を超えているのです。
【田原】それはすごい。
【坂根】内訳も出してもらいました。たとえば浜田市は介護費のほうが医療費より多く、小松市は逆でした。おそらく小松市のほうが私たちのような企業が長く存在していることで3世代が近くに住んでいることが多く、家で高齢者の面倒を見ているのかもしれません。こうやってデータで見ていくと、「うちの市はどうしてこうなのか」と気になり始めて、知恵が出るようになる。それがないと、この国の社会保障費というのは、いつまでたっても効率化の話になりません。
【田原】それにしても、自治体が社会保障費のデータを持っていないのは驚きだなあ。
【坂根】困ったことに、社会保障費だけではないのです。たとえばいま盛んに観光と言っていますが、公共交通機関の利用者数は市に知らされていません。空き家率もそう。多くの大事なデータが国や県のほうは把握できるのだけれど、そのデータが市のほうに自動的に入る仕組みになっていないそうです。これでは観光やまちづくりの知恵も出てこないし、みんなで競争して汗を流そうという気持ちも湧いてこない。地方はまずそこから始めないとダメですね。