国家百年の計を構想できる人材

ウクライナはいま日増しに救済困難な状況に陥っており、EUには救済する力もないし、意思もない、ということだ。アメリカと同じように感情的にロシアに取られたくないと思っているだけだ。しかしながら、ロシアにもウクライナを取る意思はない。人口200万人のクリミア編入コストは年間3000億円。多くはロシア編入で年金が2倍になる、という口車に乗せられて独立に賛成票を投じた人々だが、年金を積んでいたウクライナ政府は支払う義務がなくなった半面、ロシアは年金を積んでない人々に支払わなければならなくなった。

冷静になって考えてみたら、ロシア人も、もうこれ以上の編入は勘弁してくれ、と思い始めている。東部には約2000万人のウクライナ人がいるが、クリミアの10倍の人々を受け入れる財政的余裕はない。独立してロシアに来てくれたら嬉しいという状況ではすでになくなっているのだ。

ただし、ロシアとしてはウクライナのロシア系住民がいじめられる状況は捨て置けない。バルト3国やカザフスタンなどでは、旧ソ連時代の意趣返しで、居残ったロシア系住民に対する迫害が頻発している。ロシアの内政問題に直結するので、プーチン政権としては(キエフなどで極右勢力に暴行を受けるなどの)問題を放置できないのだ。

そのあたりの事情を踏まえて、関係国でウクライナの新しい統治機構のあり方について合意をしていくべきだと思うが、現状の4者協議(ウクライナ、アメリカ、ロシア、EU)はほど遠い状況だ。

これを打破してGゼロ時代の処方箋を見いだすためにはアメリカ合衆国の独立のときもそうであったが、国家百年の計を構想できる人材(ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、ジョン・アダムズなど)が必要になる。さしずめ、ジャック・アタリやイアン・ブレマーのような最高峰の賢人を呼び込んで、連邦制の叩き台になるアイデアを考えてもらうのも一つの方法だと思う。

(小川 剛=構成 AP/AFLO=写真)
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