領土問題についてロシアの公聴会で話すプーチン大統領。(AP・ロイター/AFLO=写真)

20世紀の古いマクロ経済理論に基づいたアベノミクスでは日本の反転攻勢のきっかけにならないことは、すでに指摘してきた。

日本の突破口として私が大いに期待しているのはロシアだ。逆に、にっちもさっちもいかないのが中国、韓国。両国のメディアや教育システムが、あれだけ反日一色に染まると、関係改善のきっかけが見つからない。韓国の朴槿恵政権などは(父親とは正反対で)反日的な言動を政権のエネルギーに換えている側面があるから、大統領任期の5年間は放っておいたほうがいい。

中国にしても経済成長が鈍化して国内の不満が今後高まっていく中で、不満のはけ口にしてきた日本との関係が良化するとは思えない。習近平体制が持つかどうかの問題もあるし、バブル崩壊となれば余波は日本にも及ぶ。中国、韓国にしても日本から買わざるをえない機械や部品はたくさんあるから経済的な付き合いは粛々とやっているわけで、目下、中韓との関係改善に外交的なエネルギーを注いでも、アップサイドの要因はない。

企業経営の常道を適用すれば、こうした近隣諸国とは一線を画して、大きく動く可能性が出てきたロシアに集中的なエネルギーを注ぐことで、日本経済に刺激を与えることを考えるべきだ。

日本にとって心強いのは2012年5月にプーチン大統領が戻ってきたことだ。プーチン大統領といえば柔道の有段者で週に1度は鮨屋に行くほどの鮨好きで、日本と日本文化に対して深い敬意と愛情を持っている。

前任者のメドベージェフ大統領といえば、日本を挑発するために悪天候の中、わざわざ国後島に降り立った。彼は北方領土問題についても全く自分の意見を持っていない、情報不足のロシア人の典型的な振る舞いをした。こんなトップとの話し合いは時間の無駄だが、日本贔屓のプーチン大統領なら話は別だ。

今年4月、安倍晋三首相が日本の総理大臣として10年ぶりにロシアを公式訪問したのは、政府もプーチン大統領を停滞している日ロ関係を動かせる相手と見込んでいるからだ。