毎年50万人ずつ労働力が減る

国立社会保障・人口問題研究所が発表した最新データによれば、約30年後の2040年、日本の人口は1億700万人で、現状よりも2100万人(約16%)減少するという。

デモグラフィ(人口動態)は、日本の未来を冷徹に映し出す。人口減社会の最大の問題は働き手がいなくなることだ。

団塊世代のリタイア時期に入って、今、日本の社会では毎年80万人ずつの労働力が減っている。新規に入ってくる労働力が約30万人だから、差し引き毎年50万人ずつ税金を払う人々が失われていることになる。

GDP(国内総生産)は国内で1年間につくりだす総付加価値のことであり、当然、これは働く人の数に比例する。つまり日本が現状のGDPを維持しようと思えば、50万人分ずつの労働力を補わなければならないのだ。

会社の働き手がいなくなるばかりではない。労働力が不足すれば、警察、消防、自衛隊など国の安全や治安を守るための組織すら機能しなくなる。また、今後はリタイアした人の面倒を見る労働力も大勢必要になるが、それも現時点では、まったく手当てできていない。つまり、今のデモグラフィのままなら、日本は長期衰退するしかない。

どんなに有効な少子化対策を打って出生率を高めても、間に合わない。とすれば50万人のギャップを埋めて、日本の長期衰退を回避する方法は1つしかない。「移民政策」である。

日本は1980年代後半、外国人労働者の受け入れを積極的に行ったことがある。建設現場や飲食店で働く外国人が急増したが、バブルによる人手不足の緩和を目的とした“なし崩し的な”政策だった。さらに単純労働に従事する外国人に対する評価が必ずしも高くなかったために、バブル崩壊後の不況で多くの外国人労働者が日本を去った。また居残った外国人によるトラブルも頻発した。

90年には、「日系」にこだわって、日本国籍を持たない日系外国人に定住者の在留資格を与えている。ブラジルやペルーなどから多くの日系人(パスポートを偽造したインチキ日系人を含めて)がやってきたが、廉価な労働力として扱われただけで、日本人に同化してもらうための移民政策には程遠いものだった。

その後、「失われた20年」を経て日本社会はすっかり内向きになり、移民政策をまともに論じなくなった。「移民を入れたら犯罪が急増する」「日本中を新大久保にする気か」と石原慎太郎前東京都知事に一喝されたら終わり。今日のようにネット右翼(ネトウヨ)が跋扈し、外国人に対してヘイトスピーチが垂れ流される時代には議論はさらに難しくなる。

しかしデモグラフィには10年後、30年後の未来図が映し出されているわけで、衰退が見えていて何もしないのは、行政府および立法府の怠慢でしかない。