ウクライナ経済再生に30兆円かかる

結論を言えば、ウクライナが現状の国体を維持するのは難しいだろう。ウクライナの人々にとって最悪のシナリオは旧ユーゴ化すること。それを避ける最良の方法は(13州の利害が対立したアメリカ建国のときのような)「連邦化」だと思う。それぞれ大きな裁量権を持った自治共和国をつくって、その集合体として連邦を運営していく。

ロシア系の多いウクライナ東部、キエフを中心とした中部、それからカトリックの多い西部(オーストリア=ハンガリー帝国やポーランド領になっていた)ガリツィア地方、それに国際化の進んでいる南部のオデッサなど、少なくとも4つぐらいには大きく分けて考えなければならないだろう。また東部だけを見ても、5つぐらいの行政府がある。東部で一つの枠組みをつくった後で、段階的にそれぞれの地域を自立させていく細かな仕掛けも必要だ。

欧米はウクライナ暫定政府を支持しているが、国家破綻しているウクライナを完全に救済するには最低でも13兆円、さらに飛躍する段階まで持っていくには30兆円かかる、との試算もある。EUにはウクライナよりも先に救済すべきギリシャなど南欧の問題もあるし、ブルガリアやルーマニアは自分たちを援助してもらうのが先だ、ということでウクライナのEU加盟には否定的である。さらに最近まで国境を越えてロシアに毎朝通勤(出稼ぎ)に行っていた人々が300万人もいたが、彼らのほとんどは失職してしまった。