組織は人に振りまわされ続けるべき

昨年は試験的なプログラムでしたが、ITベンチャーや人材、出版、メーカーなど約20社が参加し、50人程度の参加者の中から20人以上の内定が決まりました。なかには「週3日だけ働きたい」という東大生などもいて、まずは契約社員としてゆるやかに採用されたケースもあります。若い人たちは長期的に安定して働ける正社員を望んでいるものだと世間の誰もが思っているようですが、実際には色々な若者がいます。企業と求職者が堂々とぶつかり、少しずつお互いの理解を深めていくことで、個性や多様な価値観を尊重した働き方も実現されていくのではないかと考えています。

重要なのは、人の採用に合わせて組織も変わっていけるか、ということだと思います。東大生を契約社員として採用した前出の企業では、他にも「立って仕事がしたい」という人のために、脚高の机を用意したそうです。一人ひとりに合わせて会社を変化させようとするのは、当然労力もかかり危うさも増しますが、個人のライフキャリアと組織の開発を考える上でとても健全なことであり、これからは必要不可欠なことだと思います。そもそも、「組織」は独立した存在ではなく、人と人とが集まって作用した「場」にすぎません。組織が人を振りまわすのではなく、人が組織を振りまわしていくべきだと思います。その関係性が常に変化し、組織が小さく破壊され続けることで、絶えず再構築され、発展し、一人ひとりの働きがいも開発されていく。そして同時に、組織も成長し、会社のあり方が少しずつ見直されていくのだと思います。

そのためには、「機能として合致するか」で考えていた従来の採用のあり方を変えなければなりません。「マッチング」ではなく、お互いに理解し合えるかどうか、共感し合えるかどうか、そして変化や成長にお互いがコミットできる関係性を続けていけるか、つまり絶え間なき「リレーションシップ」が鍵になるのだと思います。僕たちが窮屈な職業観から抜け出し、自分自身の育成や開発に楽しく前向きに取り組んでいくためには、「採る・採られる」ではなく、「関わる」「変わる」という人材採用や組織開発のあり方が必要なのではないでしょうか。

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