攻撃元に中国系AIツールの痕跡

ARTEXが日本企業への攻撃に使われたことをうかがわせる調査結果も出ている。

読売新聞によると、東京のセキュリティー会社「GMOサイバーセキュリティ byイエラエ」は、9月18日からの1カ月間に国内企業への攻撃に使われた、海外の公開サーバー6台を突き止めた。6台すべてにARTEXが使われた痕跡が残っていたという。ほかのAIエージェントの形跡はなかった。時事通信によると、同社は攻撃元を調べた結果、ARTEXが使われたことを確認したとしている。これらのサーバーから攻撃を受けたとみられるのは、保険、金融、物流などの計約80社。うち8社は、実際に情報漏洩の被害を受けたと公表している。

木原稔官房長官は10月20日の記者会見で、中国系のAIセキュリティーツールが使われた可能性を指摘した民間の調査に言及した。「外国主体の関与の可能性も含めて」、誰がどこから攻撃したのかの解明に努めるという。ただ、詳細については、「現時点で確たることを申し上げる段階にはない」と述べるにとどめた。

ARTEXを使った攻撃の手は、日本以外にも及ぶ。隣の韓国では、大手銀行がターゲットとなった。銀行は対応が後手に回り、国会で厳しく追及されることになった。

韓国の金融委員会によると、10月中旬の時点で銀行を含む16の金融機関がハッキングの被害に遭い、約10万件の情報が流出していた。米セキュリティー企業クラウドストライクによると、16機関のうち新韓銀行、KB国民銀行、ハナ銀行などへの攻撃にはARTEXが使われたという。

盗んだデータの売り先をAIに尋ねる

中でも初動の遅れが焦点となったのが、KB国民銀行だ。「共に民主党」のキム・ヨンマン議員は、国会が行政をチェックする国政監査の場で、同行の対応を問いただした。

キム議員の資料によれば、最初の攻撃は9月27日午後11時19分。同行はこれをよくある異常通信とみて、攻撃元のIPアドレス(ネット上の住所)からの通信を遮断しただけだった。29日の2度目の攻撃では、さらに顧客81人分の情報が流出したとされる。最初の侵入から流出の兆候を確認するまでに約80時間もかかったと議員は批判した。

クラウドストライクの分析では、攻撃者は中国語話者で、ARTEXに頭脳役として中国製AI「DeepSeek」を接続していたという。これとは別にアンソロピックの開発ツール「クロード・コード」上で、中国の智譜AIが開発した「GLM-5.3」やアメリカ製の「Grok」も動かしていたという。

スマートフォンの画面に表示された中国のAIアプリ「Deepseek」のロゴと、ノートパソコンの画面に表示された中国のAIアプリ「Kimi」のロゴ(上)(=2026年10月21日、ドイツ西部のフランクフルト・アム・マイン)
写真=AFP/時事通信フォト
スマートフォンの画面に表示された中国のAIアプリ「Deepseek」のロゴと、ノートパソコンの画面に表示された中国のAIアプリ「Kimi」のロゴ(上)(=2026年10月21日、ドイツ西部のフランクフルト・アム・マイン)

同社は、AIがなければ攻撃はできなかっただろうとみる。同社が攻撃者の基盤から見つけた記録によると、攻撃者は韓国の銀行から盗んだデータで稼ぐ具体的な計画を持っておらず、韓国を対象にしたテレグラムのデータ売買グループを教えてほしいと、クロードに求めていた。皮肉なことに、攻撃者は同じAIツールで自身の履歴書まで作っており、身元や連絡先の手がかりを残していた。