「誰が買っているのか」を具体的にしてみる
市場を分類し、重点顧客を定義する
では、東京ばな奈の重点顧客は誰なのでしょうか。
「観光客」「出張客」など、東京に来る人すべてが顧客となり得そうですが、もう少し詳細まで掘り下げていきたいと思います。
ここで、どの軸で顧客を分けるかを考えました。最初に思いついたのは、地域(東京在住か、地方在住か)で分けることです。ただ、この軸で分けても、東京ばな奈の選び方の違いまでは見えてきません。
そこで、2つの軸を置いてみました。
1つは、年齢層。もう1つは、商品の選び方(定番を選ぶか、限定・コラボを選ぶか)です。
2つの軸を置いたのは、売場で並んでいる商品を見ていて気づいたことがあったからです。定番の「見ぃつけたっ」と、キャラクターとのコラボ商品が、同じ棚に並んでいる。この2つは、明らかに違う人に向けて置かれているように見えました(図表5)。
顧客セグメントを4つに分けてみると、それぞれの顧客層が求めているものの違いがはっきりします。
① 初めて東京へ来た若い人にとって、東京ばな奈は「名前を知っているから外さない」選択肢です。
② 同じ若年層でも、コラボや限定目当ての人は、目的を持って売場へ足を運びます。買う相手は自分や親しい人で、SNSで発信することもあります。
③ ミドル層で職場や親戚へ配る人は、個包装と箱のサイズで選びます。誰に渡しても外さないことが、何より大事です。
④ 同じミドル層でも、子や孫に渡す人は、相手が喜びそうな柄や季節限定を選びます。
ここで気づいたのは、同じ東京ばな奈を選ぶ人でも、誰に渡すのか、何を求めるのかによって、お土産の選び方が大きく異なることです(図表6)。
年齢層や選び方が異なる顧客に向けて、ブランドや商品ラインを分けるという考え方もあります。たとえば、若者向けのサブブランドをつくったり、贈答用の商品ラインを設けたりする方法です。
一方、東京ばな奈は、同じブランドの中で、異なる顧客の選び方に対応しています。
なぜ、1つのブランドで幅広い顧客に選ばれることができるのでしょうか。
1つの答えは、バナナという素材の選択にあったと考えられます。「バナナが選ばれたのは、大人にとっては子どもの頃に憧れた舶来の味であり、子どもにとっては遠足などで親しんだ味だった」とのことです(※)。つまり、バナナは世代を問わず、それぞれの思い出と結びついている食材でした。
※ 出所:地球の歩き方ウェブマガジン「お土産の定番! 銘菓『東京ばな奈 見ぃつけたっ』誕生秘話と秘密のレシピを公開!」
1991年当時、東京土産の中心は、雷おこしや人形焼のような昔ながらの和菓子でした。一方で、子ども向けの商品もありましたが、幅広い世代が一緒に楽しめる東京土産は、まだ多くありませんでした。
そこに登場したのが東京ばな奈です。誰もが知っている「バナナ」をモチーフにすることで、特定の世代に限らず、幅広い人が親しみを持てる東京土産になったと考えられます。
この親しみやすさが、渡す相手の世代や購入目的が異なっても、「東京ばな奈」という1つのブランドが選ばれる理由の1つなのではないでしょうか。


