東京土産そのものも変化してきた

社会の変化を理解する

ここからフレームワークの分析を進めていきます。まずはPEST分析からです。

フレームワークを埋めていく前に、外部環境の変化に関する仮説を考えていきます。ここで最初に考えつくのは、東海道新幹線の利用増加や空港インフラが整ったことによる国内旅行の拡大です。当然ですが、東京へ来る人が増えれば、東京土産を買う人も増えます。1991年に発売された東京ばな奈は、移動インフラの進化を通じた旅行・出張需要の拡大という大きな追い風を受けて成長したのではないか。

これは、もっともらしい仮説です。しかし、ここで1つ疑問が生まれます。同じ時代に、同じ東京土産市場で商売をしていたブランドはたくさんあったはずです。それなのに、なぜ東京ばな奈だけがここまで強いブランドになったのでしょうか。

追い風は同業他社にも同じように吹いていたはずです。差がついた理由は、変わりつつあった「土産に求めるもの」に応えられたかどうかにあるのではないか。この違和感も手がかりに、分析を深めていきます(図表2)。

4つの観点を比較すると、東京ばな奈にとって決定的だったのは、社会(Society)の変化だと考えられます。

「そもそも、私たちは東京土産に何を求めているのだろう?」

かつてのお土産には、その地域の名物や伝統を持ち帰るという意味合いが強くあったと考えられます。たとえば、東京であれば、雷おこしや人形焼のような商品が伝統的なお土産として有名です。

ところが、お土産売場で人気となっているものは、キャラクターとのコラボレーション、かわいいパッケージなどになっていることが店頭を観察するとわかります。

つまり、土産の価値が、「地域の名物を持ち帰る」から、「その場所で体験したことや発見を、誰かと共有する」へ広がっているのではないでしょうか(図表3)。

東京はバナナの名産地ではありません。

それでも「東京ばな奈」という名前を聞けば、多くの人は東京土産を思い浮かべます。特産品ではないのに東京土産として選ばれるということは、買う人が求めているのは「東京の名産」そのものではなく、「東京に行ってきた」ことを渡す相手に伝える手段だということです。

つまり、東京ばな奈は、地域の名物を商品にしたのではなく、「東京に行ってきた」と伝えるための商品として定着してきたと捉えることができます。

さらに、限定商品やキャラクターとのコラボレーションを継続的に展開し、その時代に合った商品を生み出してきました。

こうして考えると、東京ばな奈は、土産に求められるものが変わる中で、その時代に合った「東京土産」をつくり続けてきたブランドだと考えることができます。