“共食い整備”が潜水艦の建造まで遅らせた

共食い整備は、いま使っている装備の整備にかかる手間を増やすだけでは済まない。

その例が、英国の潜水艦だ。英会計検査院の2017年報告によると、英海軍の艦艇・潜水艦の共食い整備は2012年4月からの5年間で3230件に上った。建造中の潜水艦から就役中の艦へ部品が回され、部品を外された潜水艦の一隻、アートフルでは建造が42日遅れ、英国防省は遅れに伴う間接費490万(約10億3000万円)ポンドを追加で負担した。

潜水艦が水面に顔を出し、乗組員がセイルに立っている
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必要な部品が届かなければ、すでに配備した装備だけでなく、新たに配備する装備にも影響する。そこで問われるのが、企業に在庫と修理能力を確保させる契約の仕組みだ。

日仏の整備契約は何を「成果」とするのか

フランスと日本は、複数の整備業務をまとめて企業に任せる「包括契約」で、部品の供給と修理能力を確保しようとしてきた。ただし、何を企業の「成果」として評価するかには違いがある。

フランスは2019年4月、戦闘機ラファールのエンジンを除く機体・機器の整備支援の大半を、製造元のダッソー社に10年間任せる契約「RAVEL」を結んだと発表した。仏上院の2021年の報告によれば、この種の包括契約は可動率の改善などの目標を企業に課し、報酬も達成度に応じて決まる。

RAVELは、企業側に原因があって使えない機体(非可動機)を、契約対象の機数の20%以内に抑えるよう企業に求める。これは、契約時点の実績より厳しい基準だった。

仏国防省の航空整備局長は2020年、「判断待ち」で止まっていた空軍のラファールが2019年4月の10機から同年12月に2機へ減ったと下院で述べた。

ただし、仏下院の2025年の報告は、可動状況は改善したものの、効果が表れるまでには時間がかかり、機体を新しい仕様に改める作業で、改善のペースも一時鈍っているとした。報告をまとめた議員は、包括契約の効果の検証は不可欠だとして、政府が2024年予算案から可動率統計の公表をやめた点も問題視する。

6個を修理できなくても、約24億円を全額支払い

日本にも、成果に応じて対価を払うとされる整備契約「PBL」がある。防衛省のPBL指針は、国内外で広く使われる練習ヘリTH-135などでは可動機の確保に成果を上げたと評価する一方、可動率などは防衛省と企業がともに目指す「目標」とし、企業が契約で達成を約束する基準とは分けている。

陸上自衛隊(陸自)が日本電気と随意契約で結んだ2016〜19年のPBLは、戦闘ヘリAH-64Dの目標照準装置などの修理が対象だった。修理品を受け取ってから納めるまでの期間を、平均1年以内、最長29カ月以内に収めることが成果の基準だった。

修理品47個のうち6個は、故障などで同社の検査機器が約1年使えなかったこともあり、修理されないまま契約期限を迎え、返却された。それでも、契約で定めた修理期間を守ったかどうかは、修理を終えた41個だけで判定された。契約額の約24億円が全額支払われた。

この6個は2022年6月の会計検査の時点でも未修理で、担当部署はその事情を把握しながら、契約を担当する部門に報告していなかった。陸自は同年9月に手続きを改めた。参議院決算委員会は2026年7月、P-1の低調な可動状況について、PBLなどの包括契約を推進し、部品の安定的な確保を徹底するよう政府に求める決議をした。

だが、財務省の同年6月の予算執行調査によると、進行中のPBL契約12件のうち4件は、可動率のような「目標」を定めていなかった。また、12件のうち8件では、企業に原因があって、契約で約束した基準を達成できなくても、契約額の減額などができない。