1機を動かすために別の機体から部品を外す

防衛省自身が公表した写真に、現場の実情が表れている。

2022年12月、防衛費の増額を打ち出した防衛力整備計画の説明資料には、「部品取りされたP-1のエンジン」「部品取りされたF-2戦闘機」と書き添えた写真が並ぶ。

【図表】装備品の部品不足の例
出典=防衛省「防衛力整備計画について」2022年12月

動かない機体から使える部品を外し、同じ型の別の機体に付け替える。これが「共食い整備」だ。2026年版防衛白書も、部品を外す作業と取り付ける作業が必要になり、通常の部品交換の2倍の作業量がかかるため、部隊に過度な負担を強いていると認める。

小泉進次郎防衛相は同年7月の国会で、共食い整備を「行う必要がなくなったとは正直言い難い」と述べた。交換部品が届くまで待てないため、別の機体から部品を回す。その待ち時間は、「緊急」の請求でも年単位に及ぶ。

「緊急」の部品請求なのに、3割弱が1年以上待ち

「緊急」の請求でも、すぐに部品を受け取れるとは限らない。

会計検査院が2025年6月27日に公表したP-1の報告によると、2018〜22年度の部品の緊急請求のうち、調達完了まで1年以上かかったものが3割弱を占め、3年以上の例もあった。

予算の増額で改善した面もある。白書によれば、部品の単価や整備費用の上昇で維持整備予算は「必ずしも十分ではなかった」ため、2023年度から大幅に増額された。検査院は、予算増で不足が解消した部品も確認した。だが、調達そのものに時間がかかる部品は、予算を増やしても、緊急請求から届くまでの遅れが続いていた。

エンジニアが作業している手元
写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです

海上幕僚長は2026年9月15日の会見で、P-1の課題として、エンジンの一部素材が腐食して性能が低下する問題を挙げた。加えて、電子機器や武器の不具合、部品調達の長期化が、使える機体の割合である可動率を下げていると説明した。交換部品を待つ間、部隊は別の機体から部品を回して任務をつないでいる。

6日間に計16回、米軍でも部品の着脱

別の機体から部品を回す整備は、日本だけの問題ではない。

米軍でも、部品取りが長年にわたって整備の負担を増やしてきた。米政府監査院(GAO)の2001年報告によると、米海軍と空軍は1996〜2000年度に約85万件の共食い整備を報告し、余分な整備作業は約530万時間に上った。電子妨害機EA-6Bでは、妨害装置の主要部品を4機の間で6日間に計16回付け外しした例もある。

GAOの2025年報告によると、戦闘攻撃機F/A-18の整備員は、高周波用ケーブルに関する技術データを使う権利を、10年以上、製造元から得られずにいると説明した。製造を担うのはその企業だけで、修理も原則として同社の日程に左右されるため、整備員は飛べない機体からケーブルを外して使ってきた。

日本にも、特定の企業に頼らざるを得ない部品がある。海自と防衛装備庁は検査院に、製造元が1社だけのP-1の部品では、製造が止まった後、代わりを確保するなどの対応に時間がかかったものもあったと説明した。日本の事例の権利関係までは公表資料で分からない。ただ、他社に製造や修理を頼めるよう、技術データを使う権利を、契約時に確保しておくべきだろう。