黄身の固さは、時間管理と急冷で決まる
黄身の状態が思い通りにならない
→沸騰したお湯から正確に時間を計り、氷水で一気に熱の伝導を断ち切る
半熟にならない、あるいは逆に固ゆでになりすぎてしまう。これは単純に、お湯の中で卵にどれだけの「熱」を蓄えさせるかという、時間の管理ミスです。
ゆで卵という料理において、黄身は「ソース」です。殻という器の中で、その天然のソースをいかに理想の温度と固さに仕上げるか、という仕事なのです。
私は、常温に戻した卵を沸騰したお湯に入れ、そこから正確に時間を計ります。
「6分」ならとろりとした半熟、「8分」ならしっとりした固ゆで寄り、というように、時間は熱の伝導そのものです。
そして、狙った状態で止めるためには、冷水での急冷が欠かせません。お湯から上げたあとも卵の内部では調理が進み続けますから、氷水で一気に余熱を断ち切り、ソースの完成時間を固定しなければならないのです。
最初の1~2分転がし続けると断面がきれいに
黄身が中央にゆで上がらない
→白身が外側から固まる最初の数分間、向きを変え続ける
切った瞬間に黄身が片寄っていると、それだけで料理としての品格が損なわれてしまいますよね。なぜ黄身は動いてしまうのか。それは、黄身を中央に吊り下げている「カラザ」という組織の拘束力が、実はそれほど強くないからです。加熱がはじまれば、黄身は自らの浮力で、まだ液体である白身の中を自由自在に動いてしまいます。
そこで私は、白身が外側から固まりはじめる最初の1~2分の間、菜箸で優しく卵を転がし続けます。卵を回すことでお湯に対流を起こし、同時に卵の向きを変え続ける。こうして黄身が一点に沈み込むのを防ぐのです。
一度白身が固まってしまえば、もう黄身が動くことはありません。最初の数分の「手当て」が、断面の美しさを決めるのです。

