トラップ・シャイなヒグマを作る要因

道東の一部の市町村では1トンを超えそうな非常に巨大な箱わなを使用している。そのような箱わなであれば固定が多少甘くても自重だけでおそらく大丈夫であるが、巨大な箱わなは運搬にクレーン付きのトラックが必要となるため、設置可能な場所が大型トラックで進入可能な場所に限定されてしまい、機動力に劣る。一方、運搬しやすいサイズや重量の箱わなは、連結式でない限りは奥行きが短すぎる傾向がある。

ヒグマが警戒しながら箱わな内の誘引餌を食べようとする時、伏せて体を大きく伸ばし、箱わなの落とし扉より外側の位置になるべく下半身を残しながら、前肢を伸ばして餌を取ろうとする。この時に踏み板やトリガーにヒグマが触れて扉が落下すると、尻や後肢に扉が当たって完全に閉鎖されず、ヒグマはズリズリと外に這い出ることができる。

そして、扉が当たって痛い思いをした、いわゆる「ギロチン」を味わったヒグマは、以後余計に箱わな内部への進入をためらうようになる。専門用語を使うと、「トラップ・シャイ」なヒグマを作り出してしまうのである。

箱わなの構造(踏み板式)
作成=小林惑名
北海道環境生活部環境局自然環境課(2006)「ヒグマ捕獲テキスト」 p.50をもとに作成

箱わなは縦や横よりも奥行きが重要

箱わなの奥行きがヒグマの体サイズに対して十分に長ければ、このようなことは起きにくい。そのため箱わなは奥行きの設計が縦や横のサイズよりも重要なのである。

ちなみに体重350キログラムの大型オス成獣では、四肢で起立して首を前方に伸ばしている状態の鼻先(吻端)から尾の付け根(尻)までの長さ(ヒグマの正式な体長)が約2メートルであり、二本足で人間のように立ち上がった時の頭の高さが約2.7メートルである。

踏み板やトリガーは当然箱わなの最奥部より手前になるため、その分のマージンを考慮すると、箱わなの奥行きは、大型オス成獣も狙うならば3メートル、メス成獣サイズ(体重80~150キログラム・体長約1.5メートル)を中心に狙うとしても、2.5メートルは欲しいところである。すなわち奥行きの理想は2.5〜3.0メートルとなるが、この長さだと軽トラックの荷台には載らないため、連結式にするなどの工夫が必要となる。

いずれにしても狭い地域でギロチンを頻発させてトラップ・シャイなヒグマばかりにしてしまうと、夜ばかり出てきて銃では獲れない、でも箱わなでも獲れないという完全に手詰まりな状況に陥ってしまうため、要注意である。