富裕層は「3層」に分かれている
「オールドリッチ」「ニューリッチ」「シン富裕層」……。
「お金持ち」と一括りに語られることが多いが、実際に彼らと接していると、その内実はまったく異なる三つの階層に分かれている。住む場所も、お金の使い方も、何に価値を置くかも、まるで別の生き物のように違うのだ。
そして、車ほど、それぞれの価値観や時代感覚がむき出しになるものはない。
本稿では、「車との付き合い方」から彼らの生態を紐解いていく。
定番は運転手付きのセンチュリー
【第1層】オールドリッチの生態
まず「オールドリッチ」。文字どおり、旧来からの富裕層である。
彼らの富の源泉は、多くの場合、創業家として保有する自社株にある。祖父の代、あるいはさらに前の代から連綿と続く一族の資産だ。住まいは都心のタワーマンションではなく、郊外の閑静な高級住宅街にある、門から玄関まで車で回り込むような「お屋敷」であることが多い。
この層にとって、車を「所有しない」という選択肢は、そもそも存在しない。
彼らの足は、たいていトヨタ・センチュリーだ。それも自分でハンドルを握るのではなく、専属の運転手が運転する後部座席が定位置である。
センチュリーという車は、ドイツの高級車のように速さや華やかさを誇示する車ではない。むしろ「乗っていることを気づかせない」ことに価値を置く、日本的な奥ゆかしさの結晶のような車だ。オールドリッチが好むのも、まさにこの「控えめな格式」なのである。
ただ、趣味の世界では、話が一気に華やぐ。ガレージには往年のジャガーEタイプやロールスロイス、あるいはメルセデスの300SLガルウィングなど、アンティーク輸入車がずらりと並ぶというコレクターも珍しくない。
オークションで数千万、時に億単位で取引される「動く芸術品」を、彼らは静かに愛でる。乗るためというより、所有し、磨き、次代へ受け継ぐためのものだ。
ただ、安全に今風に乗りたいと、レストモッドのような改造をして芸術品を普段使いするオーナーも存在する。
オールドリッチにとって車とは、格式であり、教養であり、そして一族の物語の一部なのである。
会社を売って富を得たIT起業家たち
【第2層】ニューリッチの生態
次に「ニューリッチ」。
ここ十数年で一気に台頭してきた、新しいタイプの富裕層だ。
その多くはIT系の起業家や、自ら興した会社を上場(IPO)させ、一夜にして数十億、数百億の資産を手にした人々である。
住まいは郊外のお屋敷ではなく、都心のタワーマンションの最上階――ペントハウスだ。眼下に広がる夜景を見下ろしながら、「天下を取った」という高揚感を全身で味わっている、そんな人が実に多い。
この層、もちろんフェラーリやポルシェを所有する人は多数存在するが、「リセールバリュー」に価値を置く人が最も多い層である。
たとえば、限定生産のスポーツカー。抽選で買う機会が当たったり、ラッキーにも買う機会に遭遇し購入すれば、それだけで数千万円の含み益が乗ることも珍しくない。
ニューリッチはこれを購入し、大切に「数年寝かせる」。走行距離を極力抑え、コンディションを保ったまま数年後に手放す。すると、購入時よりも高く売れる。差し引きすれば、数年間、超一流のスーパーカーに「実質タダ」で乗っていたことになる――いや、むしろプラスになることさえある。


