すい臓を守る「ゆるい糖質制限」
ただマウスは、β細胞で働くインスリン関連の遺伝子を2つもっており、どちらかが欠けていても片方がカバーするなどして、高い再生力を備えています。一方、ヒトを含めた多くの哺乳類では、β細胞で働いてくれるインスリン関連遺伝子は1つしかないために再生力が低く、マウスと同じような方法でβ細胞が復活するかどうかはまだわかっていません。
いまのところ、ことごとく失敗しているといってもよい現状です。今後、世界中でβ細胞をリバイバルさせる新たな研究が進むことを期待しています。再生ができないのであれば、すい臓疲労を防ぐしかありません。すい臓疲労を起こさないために何よりも大切なのは、ロカボ(ゆるやかな糖質制限)で糖質摂取をゆるやかに抑えることです。
それにより食後の血糖上昇が穏やかになれば、すい臓は基礎分泌(食事と関係なく常に出るインスリン)を大きく超えるインスリンの追加分泌を求められにくくなります。その結果、もともと繊細で負担に弱いβ細胞を守ることにつながるのです。ロカボでは、減らした糖質の分を脂質とたんぱく質で補います。
肉や魚がすい臓を助ける
どちらも糖質のように急激な血糖上昇を起こしにくい栄養素ですが、それだけではありません。脂質とたんぱく質は、食事として体内に入ると、消化管から「インクレチン」と呼ばれるホルモン(小腸から分泌されるインスリン分泌を促すホルモンという意味合いの言葉です)が分泌されます。インクレチンにはGIPとGLP-1の2つがあります。
これらは小腸から分泌され、すい臓のβ細胞に作用してインスリン分泌を助けます。少しだけ専門的な説明になりますが、インスリン分泌には大きく2つの仕組みがあります。1つは、糖質を食べて血糖値が上昇したときに直接引き起こされる経路で、「惹起経路」と呼ばれます[3]。血糖の上昇という刺激によって作動する、いわば主回路です。
もう1つが、GIPやGLP-1というインクレチンなどによってインスリン分泌が効率よく進む仕組みで、こちらは「増幅経路」と呼ばれます。惹起経路が動いているときにだけ作動し、惹起経路によるインスリン分泌の効率を上げます。同じ血糖値でもより早く、より多くインスリンが分泌されるよう助ける役割を担っています。
