年を重ねたとき、人付き合いはどう変わるか。88歳イラストレーターの田村セツコさんは「昔、よく一緒にランチをしていた知人がいたが、3回目、4回目になると、話の途中で、次に出てくる言葉がわかってしまうようになった。これは少し距離を置いたほうがいいと思ったが、相手もこちらが無理をしていることも、そっと離れたいと思っていることも、全部わかっていた」という――。
※本稿は、田村セツコ『最後までひとり暮らし』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
人付き合いには、ちょうどいい線引きを
人付き合いは、増やすより「整える」ほうが、うんと楽になります。
近すぎず遠すぎず、ちょうどいい線を、自分のために引いていいの。
同じマンションのフロアに、2人か3人、気軽に声をかけ合える顔なじみがいると、それだけで心強いものです。
わたしがお手本にしている女性のひとりは、ご主人を亡くされてから、ひとりで暮らしているの。
部屋の中はまだ片づいてなくて、散らかっているところもあるのね。
あるとき、その女性のところに取材の人が来たんだけど、その部屋には入れなかったわ。「今は、まだ人に見せる状態じゃないから」と。
でも、それは決して後ろ向きなことではなくて、「今はちょっと、心の調子がよくないのよ」というサインでもあるのよ。
お酒でごまかしたりせず、「今日は人を呼ばないほうがいいな」と、自分で線を引いているわけ。そういう誠実さが、わたしは好きです。
だから、わたしは「ひとりで飲んでいる」という事実だけで、その人を判断しないようにしているわ。
バーでも居酒屋さんでも、自然と話をするようになれば、相手の顔が見えてくるものよ。
カウンターの向こうに、男性の写真が一枚飾ってあって、それを大切そうに眺めている女性を見ると、「ああ、この人はひとりで飲んでいるけど、本当はひとりじゃないんだな」と思ったりするの。

