年を重ねたとき、人付き合いはどう変わるか。88歳イラストレーターの田村セツコさんは「昔、よく一緒にランチをしていた知人がいたが、3回目、4回目になると、話の途中で、次に出てくる言葉がわかってしまうようになった。これは少し距離を置いたほうがいいと思ったが、相手もこちらが無理をしていることも、そっと離れたいと思っていることも、全部わかっていた」という――。

※本稿は、田村セツコ『最後までひとり暮らし』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

サラダを食べる女性
写真=iStock.com/Nastasic
※写真はイメージです

人付き合いには、ちょうどいい線引きを

人付き合いは、増やすより「整える」ほうが、うんと楽になります。

近すぎず遠すぎず、ちょうどいい線を、自分のために引いていいの。

同じマンションのフロアに、2人か3人、気軽に声をかけ合える顔なじみがいると、それだけで心強いものです。

わたしがお手本にしている女性のひとりは、ご主人を亡くされてから、ひとりで暮らしているの。

部屋の中はまだ片づいてなくて、散らかっているところもあるのね。

あるとき、その女性のところに取材の人が来たんだけど、その部屋には入れなかったわ。「今は、まだ人に見せる状態じゃないから」と。

でも、それは決して後ろ向きなことではなくて、「今はちょっと、心の調子がよくないのよ」というサインでもあるのよ。

お酒でごまかしたりせず、「今日は人を呼ばないほうがいいな」と、自分で線を引いているわけ。そういう誠実さが、わたしは好きです。

だから、わたしは「ひとりで飲んでいる」という事実だけで、その人を判断しないようにしているわ。

バーでも居酒屋さんでも、自然と話をするようになれば、相手の顔が見えてくるものよ。

カウンターの向こうに、男性の写真が一枚飾ってあって、それを大切そうに眺めている女性を見ると、「ああ、この人はひとりで飲んでいるけど、本当はひとりじゃないんだな」と思ったりするの。