死への恐怖とは、どう付き合えばいいのか。ひとり暮らし歴70年、88歳イラストレーターの田村セツコさんは「最初は、病気、痛み、ひとりで迎える最期のことが、正直に言うと怖かった。でも、あるとき、ふっと『死ぬのも、初めてのことなんだ』と肩の力が抜けるように思った」という――。

※本稿は、田村セツコ『最後までひとり暮らし』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

公園で新鮮な空気を吸う美しい年配の女性
写真=iStock.com/Mariia Vitkovska
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「死んだら、いろんなしがらみから解放される」

「死」という言葉を出した途端に、急に空気がしんみりしてしまうことがありますよね。

お茶の席でも、「やめてよ、そんな話」と、笑いながら話題を変えようとする人もいるわ。

でも、死を避けようとすればするほど、かえって後ろから、そっと追いかけてくるような気がしませんか。

わたしは、少しだけ視点をずらしてみることにしたの。

「死んだら、もういろんなしがらみから解放されるのよね」

そう考えると、今この瞬間が、急に軽くなるんですね。

家族の期待、世間体、「おばあさんなんだから、こうあるべき」という目に見えない鎖。

そういうものが、実は全部「期限付き」なんだと思うと、「まあ、いいか」と力が抜けてくる。

どうせ最後には、みんな返却していくんですよね。

立派なお皿も、高かったコートも、「いいおばあさんであろうとしたわたし」も。

だったら、そのあいだくらい、ちょっとくらい好き勝手に着て、食べて、しゃべってもいいじゃないのと、わたしは思っているの。