死への恐怖とは、どう付き合えばいいのか。ひとり暮らし歴70年、88歳イラストレーターの田村セツコさんは「最初は、病気、痛み、ひとりで迎える最期のことが、正直に言うと怖かった。でも、あるとき、ふっと『死ぬのも、初めてのことなんだ』と肩の力が抜けるように思った」という――。
※本稿は、田村セツコ『最後までひとり暮らし』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
「死んだら、いろんなしがらみから解放される」
「死」という言葉を出した途端に、急に空気がしんみりしてしまうことがありますよね。
お茶の席でも、「やめてよ、そんな話」と、笑いながら話題を変えようとする人もいるわ。
でも、死を避けようとすればするほど、かえって後ろから、そっと追いかけてくるような気がしませんか。
わたしは、少しだけ視点をずらしてみることにしたの。
「死んだら、もういろんなしがらみから解放されるのよね」
そう考えると、今この瞬間が、急に軽くなるんですね。
家族の期待、世間体、「おばあさんなんだから、こうあるべき」という目に見えない鎖。
そういうものが、実は全部「期限付き」なんだと思うと、「まあ、いいか」と力が抜けてくる。
どうせ最後には、みんな返却していくんですよね。
立派なお皿も、高かったコートも、「いいおばあさんであろうとしたわたし」も。
だったら、そのあいだくらい、ちょっとくらい好き勝手に着て、食べて、しゃべってもいいじゃないのと、わたしは思っているの。

