仕事ができても、採算は別問題

こうした物流・製造現場での進歩は、中国のロボット実用化が着実に前進していることを示す。ただし、作業が速く正確になることと、導入した企業が費用を回収できることは、同じではない。

例えば、先述の南昌工場のG2は、第一財経の6月の取材時点で電池が約4時間持ち、人が交換していた。検査作業を任せられるようになっても、運用には人の手が必要だった。

機体の価格について、開発元の担当者は第一財経の取材に、人件費の約2年分と答えた。ただし、これは2年で投資を回収できたという実績ではない。機体代に加え、現場に合わせた調整、運用、保守などにかかる費用を、導入によって減らせる人件費や増やせる生産量と比べる必要がある。

人より作業が遅くても、働き手を確保しにくい夜勤を任せられれば、導入する価値はある。逆に、同じ作業を繰り返す工程なら、専用の機械のほうが有利な場合もある。どの仕事を任せるかによって、採算は変わる。

継続的な普及を左右するのは、導入した工場が効果を確かめ、追加で購入するかどうかだ。技術の進歩を、次の注文につなげられるか。これは、ロボットを売るメーカーの経営にも直結する。そして、この「採算」の問題は、いま急成長する人型ロボット企業にも突きつけられている。

3兆円超の支援で需要も後押し

中国では、ロボットを開発する企業だけでなく、購入・導入する側も政府が支えている。

2025年5月のロイター報道によると、当局がそれまでの1年間に人型分野へ割り当てた資金は200億ドル超。1ドル=150円で換算すると、3兆円を超える。実際に支出された総額ではないが、産業育成に向けた支援の規模は大きい。

中国の国旗とロボットアーム
写真=iStock.com/Igor Kutyaev
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買い手への補助もある。中国科学技術省の説明によれば、武漢市は人型ロボットの活用現場を提供する事業者に、事業費の30%、最大100万元(約2000万円)を補助するとしていた。導入費用の一部を公費で負担し、企業が試しやすくする仕組みだ。

政府自身も買い手になっている。ロイターの2026年8月の調査報道によれば、中央・地方政府による人型ロボットや訓練設備などの購入額は、同年上半期に少なくとも2億3000万ドルに達した。前年同期の6200万ドルから約3.7倍に増えている。

こうした支援は、開発途上のロボットを現場で試し、改良する機会を増やす。ただし、政府の購入が増えたことだけでは、民間の工場が採算を見込んで買い続ける市場が育ったとは判断できない。

メーカーにとっては、どちらも売り上げになる。しかし、産業育成のための注文と、使って効果を確かめた顧客からの追加注文では、今後の需要を見通す意味が違う。

人型ロボット企業として初めて上海市場に上場した宇樹科技(Unitree)は、目論見書で2025年1〜9月の人型ロボット売りげ上げの内訳を開示した。新浪財経の報道によると、73.6%が科学研究・教育向けで、工場や家庭などの用途に使われた分は1割に満たない。売れた機体の多くは、まだ稼ぐ仕事に就いていない。

そして、この「売り上げの中身」が、株式上場の審査でも問われ始めた。