睡眠の質の低下が、認知機能低下の一因に

「ノンレム睡眠」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。私たちの睡眠には段階があり、ノンレム睡眠は主に脳(と身体)を深く休息させるための睡眠のことを言います。

「グリンパティックシステム」の仕組みが最も働くのが、ノンレム睡眠の中でも「N3睡眠」と呼ばれる深い眠りの段階で、眠っている間に日中の活動で溜まった老廃物が押し流されていくのです。

睡眠中に排出されるものの中には、「アミロイドβ」や「タウ蛋白」といった、認知症(アルツハイマー病)との関係が深いとされる異常たんぱく質も含まれています。

つまり、しっかり眠ることは単に疲れを取るだけでなく、脳の中に溜まった不要物を片づけ、次の日に使いやすい状態へ戻してくれるのです。

逆に言えば、睡眠不足の状態だと脳の掃除はどうなってしまうのか? わかりやすいですよね。

脳の中に老廃物が残りやすくなり、情報処理の効率が落ち、記憶力や注意力も低下するでしょう。慢性的な睡眠不足や睡眠の質の低下が、認知機能低下の一因になると考えられているのは、そのためです。

「最近、覚えが悪い」「思い出せないことが増えた」などと感じるとき、私たちはつい年齢や能力のせいにしがちです。ですが、もしかするとそれは、「睡眠の質」の問題かもしれません。

つらそうに頭を押さえる女性
写真=iStock.com/kyonntra
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睡眠のカギとなる「体温」

良い睡眠が記憶力向上に有効な働きをすることが、ここまでで十分伝わったかと思います。では、私たちにとって良い睡眠とは何か、睡眠の質を上げるにはどうすればいいのか、そういった部分にも触れておきましょう。

「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」「朝起きても疲れが取れていない」など、こうした悩みは、多くの人が感じています。そして、その原因を「ストレス」や「年齢」のせいにしてしまうことも少なくありません。

ですが実際には、睡眠の質は夜だけで決まるものではなく、日中の過ごし方によって大きく左右されています。

質の良い睡眠を手に入れるために、もっともシンプルで効果的なのが「歩くこと」です。その理由は「体温」にあります。

人の体温には、皮膚表面の温度と、脳や内臓など身体の内部の温度である「深部体温」があります。

眠りに入りやすい状態になると、手足などの末梢血管が広がり、身体の内部の熱を外へ逃がしやすくなります。その結果、深部体温が下がり、眠気が強くなると考えられています。