「もう年だから」と諦めたら絶対ダメ
なぜ、歩くことでここまで大きな変化が起こるのか。その背景には、脳の中で起きている複数の変化があります。少し専門的な話になりますが、歩くことでインスリン様成長因子(IGF)と呼ばれる物質が分泌され、それが脳由来神経栄養因子(BDNF)の分泌を促進します。
わかりやすく言えば、歩くことで脳は「学びやすく、覚えやすい状態」に変わっていくのです。
もちろん、記憶力を高める方法はウォーキングだけではありません。記憶術や脳トレ、栄養、睡眠といった要素も重要です。ですが、その中でも「歩くこと」は、特別な準備も道具も必要なく、誰でもすぐに始められる方法です。
何より、脳そのものを変える力を持っています。
大切なのは、「もう年だから」と諦めないこと。記憶力は、失われるものではなく、取り戻すことができるもの。そして、育てていくことができるものだと知ってください。
歩くというシンプルな習慣が、その第一歩になります。
先ほどのピッツバーグ大学の研究結果でもお伝えしたように、海馬は何歳になっても新しい神経細胞が生まれることが確認されています。つまり、海馬は「使えば育つ」器官だということ。
新しいことに挑戦する、環境を変える、体を動かす。こうした刺激によって海馬は活性化し、神経のつながりが強化されていきます。その結果、記憶力そのものが向上していくということです。
一方で、海馬は非常に繊細な部位でもあるので、強いストレスがかかると、ストレスホルモンであるコルチゾールの影響で神経細胞がダメージを受け、記憶力が低下します。
海馬を刺激し、働きを高めるシンプルな行為
睡眠不足も同様で、記憶の整理がうまく行われず、長期記憶として残りにくくなります。過度な飲酒なども海馬の働きを低下させる要因になります。
海馬のパフォーマンスを最大限に引き出すためには、運動、睡眠、ストレス管理といった基本的な生活習慣が欠かせません。
海馬は、「記憶を選び」「記憶を整理し」「記憶をつなぎ」「記憶を取り出す」という、記憶のすべてのプロセスに関わっています。そして、歩くというシンプルな行為が、この海馬を自然に刺激し、その働きを高めていくのです。
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