買収で「日米同盟は強化された」
製造業界ニュースサイトの米マニュファクチュアリング・ダイブは、「日本製鉄の米鉄鋼市場における賭けは利益を生み始めている」と分析し、USスチール買収が成功であるとの見方を8月の分析記事で示した。
また、米上下両院で長年外交問題の政策立案アドバイザーとして活躍してきた、米有力シンクタンクである外交問題評議会(CFR)のダニエル・ボブ研究員も6月に米政治サイトのザ・ヒルへの寄稿で、「日本製鉄に買収されたUSスチールは縮小どころか、積極投資をしている。同社の労働者たちは苦境から受益へと境遇が変わり、米国政府の経営への関与も確保された。これにより日米同盟は強化された」と結論付けた。
こうして見ると、やはり橋本会長の情勢判断は正しかったように見える。
日鉄は巨額投資を早期に回収できそうだ
一方で、インド系米鉄鋼スタートアップのメサビ・メタリックスが、中西部アイオワ州で年間生産量750万トン級の巨大な垂直統合型製鉄所を2030年に操業開始する予定が、9月28日にトランプ大統領から発表された。
これは、モンバレー地域の生産量350万トンの2倍以上の規模だ。米国内の競争は激化傾向にあり、長期的に日本製鉄が投資を回収できるかは未知数だ。しかし少なくとも、現下の日本製鉄の米国事業を取り巻くムードと状況は大変よい。
USスチールの労使協約改定は、この先5年間で18.2%の賃上げと4000ドル(約63万円)の記念ボーナスなどの条件で基本合意しており、労使間の隔たりが大きい退職者の医療保険負担の問題も10月を目途に解決されるとみられる。労組が特にこだわった熱間圧延設備の新設と雇用の安定の保証は、この記事で見たように実現しつつある。
現場労働者の高い士気に支えられて、USスチールは高級鉄鋼生産でライバルとの差別化を図り、同時にトランプ関税で中国製品などから守られる。「好業績はトランプ関税に支えられたタイトな需給で生み出された米国固有の一時的な事情のおかげ」「ダメダメであったUSスチールの真の改革はむしろこれから」「巨額投資が回収できるかは未知数」との厳しい指摘もあり、いち企業の大きな賭けの成否はまだまだ予断を許さないが、日本製鉄が巨額投資を早期に回収できる可能性が高まっているのではないだろうか。
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