トランプ関税がUSスチール買収に奏功
日本製鉄のUSスチール買収を、どの基準で「成功」と評価するかは、①同社の世界戦略における中長期的な成長と安定への貢献、②投資の回収、③日米の政治と経済、安全保障連携における役割、などさまざまなマクロの尺度が考えられる。
米有力ニュースサイトのアクシオスは、日本製鉄のUSスチール買収1周年の分析記事で、「直近の日本製鉄の決算では、USスチールが大きな貢献をしているが、投資が回収できるかは不透明だ」とする懐疑的な論調を展開した。
しかし、日本製鉄は業績基準の達成に不可欠な「現場労働者からの支持」「地元の好意」を勝ち取っている。また、自由貿易を好む米メディアで悪者扱いされているトランプ関税が、こと日本製鉄のUSスチール買収に関しては、大きくプラスに働いている。なぜなら、米国の鉄鋼輸入が2026年1~7月に前年比21.6%も減少する一方で、同期間の米メーカーによる出荷量が前年比で5.3%伸びているからだ。
国内シェアもみるみる上昇、主導権を取り戻した
そうした中、日本製鉄はペンシルベニア州以外でも、中西部インディアナ州ゲリーの高炉拠点における熱延設備増強と高炉改修、南部アーカンソー州ビッグリバーの電炉拠点におけるプラント新設、南部アラバマ州フェアフィールドの鋼管拠点における高級ねじ切り設備の増設など、米国各地で戦略的な投資に勢いをつけている。
積極投資により、自動車向けの高級製品はもちろんのこと、米国への製造業回帰やAIデータセンター建設など旺盛な需要を取り込み、業績をさらに改善させる目論見だ。
トランプ関税により、USスチールの出荷量の米国内シェアは2024年の9%から2025年に11%、2026年上半期に13%へ上昇するなど勢いがついており、最終販売価格でもUSスチールが主導権を握る中、投資は案外早く十分な利益となって返ってくる環境にありそうだ。
