積極投資で新たな製品・雇用が生まれ始めている
しかし日本製鉄は、「弊社が世界一に復権するために必要かつ有効な戦略」(橋本会長)であるUSスチール買収を、不退転の決意で実行している。
安易な撤退や事業所閉鎖をしない「証拠金」として、米国政府が重要な経営決定に拒否権を発動できる「黄金株」さえ差し出しているのだ。
実際に、USスチール再生の約束は目に見える形で実現し始めている。
高炉拠点であるペンシルベニア州のモンバレー地域においては、熱延設備の新設が許認可フェーズに入っており、老朽化設備では叶わなかった念願の自動車向け高級製鋼製造への第一歩が踏み出された。すでに連邦レベルの汚染物質排出審査(NPDES)は一部が終了し、地元当局の建設認可も間もなく下りると見られる。
同時にモンバレーでは、セメントの材料、コンクリートの骨材、道路の路盤材など、幅広い社会インフラに活用される鉄鋼副産物であるスラグを効率的にリサイクル処理する設備に対して、2月に認可が下りたことで、新設工事が進行中だ。
これらのプロジェクトにより、モンバレーにおけるおよそ3000人規模の鉄鋼関連雇用が守られるだけでなく、地元経済でこの先3年間に3200人規模の間接雇用が生み出される。
政治と労働者の両方を味方につけた日本製鉄
日本製鉄のUSスチール買収1周年を祝う6月の式典に招かれたハワード・ラトニック米商務長官は、エドガー・トムソン製鉄所でおよそ80人の現場労働者代表たちを前に、「米国政府から見て、ニーパン(Nippon)は絶対的にディールの約束を守っている」と断言した。このように日本製鉄は政治を味方につけており、トランプ政権からの評価は極めて高い。
さらにラトニック長官は、「ここで鉄鋼が生産されれば、米国はより強くなれる。鉄鋼労働者の未来が力強ければ、モンバレー地域の未来も力強い」と述べて、従業員たちからも大きな喝采を浴びた。日本製鉄はまた、労働者も味方につけている。
こうした中、現場労働者たちにも、変化が表れている。目先の利益しか見ず、明確なビジョンも持たなかったUSスチールの経営陣と、それを買収した日本製鉄が違うことを、感じ取っているからだ。
