仕事熱心で、前向きな人だから評価される
さらに興味深いのは、昇進した人たちの幸福度を昇進する前から見た場合です。
昇進した人は、昇進したあとに突然幸福度が高くなったわけではありません。
むしろ、昇進する前から、昇進しなかった人より幸福度が高い傾向が見られました。
この結果をみると、昇進したから幸せになったのではなく、もともと幸福度の高い人が管理職に選ばれている可能性があるのではないでしょうか。
仕事熱心で、物事を前向きに考え、日々の生活にも比較的高い満足感を持っている人。
そういう人が職場でも評価され、その結果として管理職に選ばれやすいのだとすれば、「昇進した人は幸福度が高い」という結果の見え方も変わってきます。
「出世したから幸せになった」とは限らないのです。
給料は増えるが、同時に「負担」も増える
では、なぜ管理職になって収入が増えても、幸福度まで上がらないのでしょうか。
その感覚は、物語の主人公・和久野真中の姿からも見えてきます。
真中は会社で成果を出し、課長代理に昇進します。
それまで昇格試験に苦戦してきた真中にとって、管理職になることは大きな前進でした。
役職がつく。給料も増える。会社からも認められる。
会社員としての自分の価値が上がったように感じるのも無理はありません。ところが、管理職になってみると、それまでとは違うものも背負うことになります。
責任は増える。仕事量も増える。残業代はつかなくなる。同年代の管理職たちと飲みに行けば、「マジで帰れない」「上は無茶振りを無茶振りとも思っていない」といった愚痴が次々に出てきます。
それでも最後には、「ボーナスも合わせれば年収ベースでは管理職の方が高いからね」
という言葉で、自分たちを納得させる。
収入だけを見れば、確かにプラスです。
しかし、人の幸福を左右するのは収入だけではありません。
自由に使える時間、仕事上の責任、ストレス、健康状態。
給料と同時にこうした負担まで増えるのであれば、「年収が上がったから、その分だけ幸せになった」という単純な話にならないのも不思議ではありません。

