画面設計の予算を確保するのは難しい
筆者の個人的な体験談になるが、システム移行後にANA便を利用した際に、確かにシステムとしては非常に使いにくく、レスポンスが遅いと思った。
ここからは推測になるが、ANAの情シスとしては、アプリやウェブの画面をもっと使いやすいものにしたかったのだと思う。
しかし、そのためにはコストがかかる。今回のような極めて大規模なシステム更新では、システムの移行が最優先で、画面の使いやすさはシステム全体においては優先度が低くなることがある。アプリやウェブサイトの画面設計の重要性を経営層に伝え、そのために億単位の予算を確保するのは簡単ではない。
結果として、システム開発コストは抑えられたかもしれないが、問い合わせは激増しコールセンターコストは大幅に上昇したことだろう。
以前のシステムと同じような画面デザインと機能を維持することにコストをかければ、「発生しなかったコール」「離脱しなかった顧客」という見えないコストを発生させることはなかったかもしれない。
しかし、これを事前に予測し経営を説得することは非常に難しい。
20年間変わらないYahoo!のトップページ
ユーザーの体験を重視し、見えないコストを考慮していることがわかる代表例はYahoo!だろう。
あまり知られていないと思うが、過去のウェブサイトのアーカイブがあり、2006年12月5日のYahoo! JAPANのトップ画面を見ることができる。
これを現在のYahoo! JAPANのトップ画面と見比べると、多少の違いはあるものの、全体的なデザインはほぼ変わっていないことがわかる。
これは、たとえもっと良いデザインがあったとしても、数千万人のユーザーの学習コストと学習のストレスを考えれば、大幅な変更は避け、小さな変更を積み重ねていくほうが良い、というポリシーが徹底されているためだ。
こうした考え方は、実はYahoo!だけではなく多くの一般向けサイトでも同じだ。
好き嫌いはあるだろうが、楽天市場の画像の多いガチャガチャした画面が変わらないのも、Googleのトップ画面がシンプルなままなのも、変えないことの価値がわかっているからだ。
一方、同じように見えても、システムの裏側は20年前とまったく違う。サーバーもシステムもセキュリティもすべて変わっている。
情シスはこのような「見えないコスト」と向き合う仕事をしているのだ。
情シスのことをメンドクサイと思っている人にも、こうした情シスの苦労を少しでも理解してあげて、少しは優しくしてあげてほしいと思う。
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