大反響だった日経新聞「私の履歴書」
日本経済新聞の看板連載「私の履歴書」がスタートしたのはいまから70年前、1956(昭和31)年3月のことである。
著名人が半生を回顧する自伝的エッセイ。第1回の登場者は新聞記者出身の政治家、鈴木茂三郎(第2代社会党委員長)だった。鈴木は前年の衆院選で社会党を大躍進させ、時の人となっていた。
その後、松下幸之助(パナソニック創業者)や武者小路実篤(作家)、石橋湛山(元首相)、岸信介(元首相)、本田宗一郎(本田技研工業創業者)、東山魁夷(画家)といった各界の大御所が続々と登場。
「私の履歴書」からお声がかかれば、それは一流の証――いつしかそんなブランドが形成されていった。
現役幹事長による「自伝」
連載開始から10年後の1966(昭和41)年、異色の政治家が登場を果たした。当時、自民党幹事長だった田中角栄である。
それまでの登場者のほとんどが連載開始時に60歳以上であったのに対し、当時の角栄はまだ48歳。すでに郵政大臣(就任時39歳は当時の最年少記録)、大蔵大臣を経験していたものの、これから総理大臣を狙おうかという政治家が、半生を振り返る連載に登場するのは極めて異例だった。
現役幹事長による「自伝」の反響は大きかった。
連載終了からわずか3カ月後の6月、早くも『田中角栄 私の履歴書』(日本経済新聞社)が単行本として出版されたのである。
「私の履歴書」はそれまでも単行本化されていたが、1冊のなかに10人ほどが詰め込まれたオムニバス形式だった。単独で1冊の本になったのは角栄が初めてである。



