スマートフォンや音楽プレーヤーで“渋滞”
●ワースト5:ながらスマホのラン
スマートフォンや音楽プレーヤーなどを使用しながら走る「ながら通行」だ。特にイヤホンには注意が必要だろう。音楽やラジオを聞きながら走ること自体を楽しみにしている人は多い。しかし、前述した通り、ランナー同士でも走行スピードは大きく違う。
周囲の音が聞こえにくい状態では、後方から近づく人や自転車などの存在に気づくのが遅れてしまう。イヤホンを装着してゆっくり走るランナーが後方の状況に気づかず、ランナー同士の“渋滞”が起きてしまうこともある。
また、スマートフォンを確認しながら走るのも危険だ。ランニングウォッチを操作する場合でも同様で、数秒間視線を落としただけで、その間にかなりの距離を進む。走っている本人は「前を見ているつもり」でも、周囲の情報を十分に把握できていない可能性があるので注意してほしい。
以上5つに共通しているのは、「皇居はランニングコースである」という意識が強くなり過ぎていることだろう。多くのランナーが走っているため、そう錯覚してしまうのかもしれない。しかし本来、皇居周辺の歩道はランナー専用のコースではない。目的地へ向かうための通路であり、散歩を楽しむ人もいれば、観光で訪れる人もいる。そのことを肝に銘じなければならない。
ランナーだけが悪いわけではないが…
●番外編:歩行者
一方で、この問題を「マナーの悪いランナー対歩行者」という単純な構図にするべきではないとも思っている。ランナーから見れば、歩行者の行動に危険を感じることもあるからだ。
数人が横一列に広がって歩道をふさいでいる。スマートフォンを見ながら突然進路を変える。急に立ち止まったり、横切ったりする。ランナーと歩行者が混在する以上、双方が周囲を意識しなければ事故につながる可能性がある。
ただし、ここで重要なのは「お互いさま」で終わらせないことだ。なぜなら、歩いている人と、ハイペースで走っている人では、衝突した際の危険性が全く違う。速く移動する側ほど、より大きな注意を払うべきだろう。
これは歩道における自転車と歩行者の関係にも似ている。歩行者に問題のある行動があったとしても、それを理由に自転車が危険な走行をしていいことにはならない。
前方に歩行者がいたら減速する。狭い場所では無理に追い越さない。集団なら一列になる。混雑している時間帯ならペースを落とす。自分のランニングよりも、歩行者の安全を優先する。それが公共空間で走る最低限の条件ではないだろうか。
皇居ランは「ランナーが自由に走れる場所だから成立している」のではない。多くの人が利用する公共空間のなかで、歩行者などに配慮することを前提として成り立っているスポーツ活動なのだ。
なお、東京都千代田区では「皇居周辺歩道利用マナー」を定め、以下の9つのマナーを呼びかけている。
・歩道をふさがない
・狭いところは一列に
・周回は反時計回り
・タイムよりゆとり
・ながら通行は控える
・自転車はすぐ止まれるスピードで
・ゴミは必ず持ち帰る
・思いやりの心で
何度も繰り返すが、歩道はあくまでも歩行者優先だ。歩行者がスムーズに通行できるよう、ランナーには配慮が求められる。歩行者を気にせず練習に集中したいなら、陸上競技場やランニング専用コースなどで存分に走っていただきたい。
皇居ランには大きな魅力がある。だからこそ、その文化をランナー自身が壊してはいけない。
ランナーと歩行者との摩擦が大きくなり、事故やトラブルが増えれば、最終的にランニングへの規制が強化される可能性も否定できない。皇居ランを守るために必要なのは、新しいルールを次々と作ることだけではないだろう。歩行者を見かけたら少しスピードを落とす。狭い場所では無理に抜かない。集団なら横に広がらない。
そんな小さな判断を一人ひとりが積み重ねることのほうが重要だ。
皇居はランナーだけの「競技場」ではない。誰もが利用する公共空間を、ランナーも利用している。その意識を共有できるかどうか。「皇居ラン」という文化をこれからも残していくために、いま改めてランナーの“気持ち”が問われている。
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