「未来の共生社会」を描く授業
2026年1月22日、2時間目が始まったばかりの教室を訪ねると、1年生の生徒がノートパソコンを見ながら絵を描いていた。週に2コマある「日本語」の授業である。
この日の授業は「未来の共生社会」について考えるという内容だ。自分が理想とする街や社会をイラストで描き、なぜそういうイラストを描いたのか、自分の考えをまとめた説明文と、最後にみんなの前で発表するための説明文を書く。最初の説明文は他言語が混じっていてもOKだが、最後の説明文は伝わる日本語で書く必要がある。
頭の中にある未来の共生社会を描くという行為を通して思考力や表現力を見つつ、日本語能力の向上を目指す狙いだ。黙々とイラストを描いている生徒もいれば、友だちと何やら議論している生徒もいる。中には授業の進め方をあまり理解していない生徒もいたが、周囲の生徒がポルトガル語や英語で教えていた。発表する時は基本的に日本語だが、その前段階の思考や議論の部分は各生徒が得意とする言語を使って構わない。
このクラスには、ブラジル、フィリピン、ウガンダ、中国などから来た生徒が在籍している。中高一貫校になったことで、外国にルーツがある生徒が衣台高校に進学するケースは増えており、今の1年生はそうした生徒が5割を占める。
日本語のせいで思考を止めない
なぜ思考や議論の時は多言語なのか。「日本語」の授業を担当する大西奈津さんは次のように語る。「日本語のせいで思考を止めないでほしいんです。自分が持っているすべての言語で最大のパワーを出してほしい」。
東京外国語大学多言語多文化共生センターでセンター長を務める小島祥美教授によれば、子どもの「ことば」の発達と習得には、子ども自身の生育歴や育った環境などで大きな差が出るという。
例えば、日本生まれや幼少期に来日した子どもは、保育園・幼稚園での生活や友だちとの遊びを通じて日本語を「聞く・話す」力を自然に身につけるため、小学校の中学年になれば、他の子どもと同じくらい流暢に話せるようになっていることが多い。ただ、「読む・書く」力の習得については学校や家庭などの環境が大きく影響し、個人差が出るため、教科の内容を理解するには授業などできめ細かく支援する必要がある。また、母語や母文化をどのように維持するかという課題も生じる。
