愛知県は、日本語指導が必要な外国籍の生徒が1万1924人と全国で最も多い。『愛知県は天下を取るがね』の著者・篠原匡さんは「豊田市の県立衣台高校では、母語も活用した授業で、日本語の壁に阻まれた生徒の能力を引き出そうとしている」という――。

※本稿は、篠原匡『愛知県は天下を取るがね』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

空の教室
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受け入れと家族支援は車の両輪

愛知県の深刻な労働力不足と外国人労働者の受け入れ。確かに労働力不足は日本における特大の社会問題だが、同時に、もう一つ考えなければならないことがある。それは、受け入れた外国人とその家族をどのように社会に包摂していくかという点だ。

とりわけ深刻なのは、彼らの子どもの教育である。愛知ではこの10年、日本語指導が必要な児童・生徒が急増している。この状況を放置すれば、彼らは十分な教育を受けることができず、日本社会の中で孤立してしまう。

大国が自国の利益を追求する弱肉強食の時代に、「インクルージョン」などという甘甘のセリフを吐いてどうすると怒られそうだが、外国人であっても教育の機会を設けるのは人として当然の責務だ。それに、日本社会に適応しない外国ルーツの若者が増えれば、社会の不安定化や治安の悪化などの形ではね返る。それを思えば、外国人の受け入れと本人・家族に対するサポートは車の両輪だ。

日本語指導が必要な子が全国最多

文部科学省のデータによれば、愛知には日本語指導が必要な外国籍の児童・生徒が1万1924人いる。2位の神奈川が6182人なので、その数はダントツの1位だ。特に小学校と中学校に多く、両者で90%を超える(2023年5月1日時点のデータ)。言語別ではポルトガル語が多く、全体の40.5%を占める。次いでフィリピン語(21.2%)、中国語(8.8%)、スペイン語(8%)、ベトナム語(5.7%)と続く(2023年調査)。

ポルトガル語が多いのは、1990年の入管法改正後、自動車産業など愛知の製造業で働く日系ブラジル人が増えた影響だ。こうした外国籍の子どもについては、江戸川区や足立区、川崎市など首都圏でも増えており、全国的な課題となっている。

もっとも、愛知はこの問題に早くから直面してきたこともあり、学校や地域での日本語支援や日本語教育についてはさまざまな取り組みが既に進められている。そういう面で見れば、愛知はこの分野の“課題先進県”と言っても過言ではない。

例えば、県内の小中学校に対して、外国にルーツを持つ子ども向けに、日本語だけを教える教員「日本語教育適応学級担当教員」を2026年度で830人配置している。2010年度は294人だったため、2.8倍の増加だ。これは、全国の日本語教育適応学級担当教員の実に18.4%に当たる。こうした日本語担当教員が小学校の低学年時に補習という形でサポートすることで、子どもたちの多くは日本語能力を身につけて中学に進学している。