※本稿は、篠原匡『愛知県は天下を取るがね』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
信長、秀吉、家康が重要視した国宝の城
犬山城は十分過ぎるほどに有名だが、現存最古の天守を抱える犬山城とユネスコ無形文化遺産に登録されている犬山祭の車山行事、そしてものづくりの原点とも言えるからくり人形は世界に訴求できるだけの力を持っている。
日本に12カ所しか残っていない現存天守の一つである犬山城は、その歴史的な価値の高さから国宝に指定されている。国宝に指定されている城は、松本城、犬山城、彦根城、姫路城、松江城の5城だけだ。
犬山城は、戦国時代に3回の大きな戦いを経験している。まず、織田信長が尾張国を掌握する際に起きた1564(永禄7)年の尾張統一戦。次に、羽柴(豊臣)秀吉と織田信雄・徳川家康の連合軍が激突した1584(天正12)年の小牧・長久手の戦い。そして、1600(慶長5)年の関ヶ原の戦いの直前に起きた前哨戦だ。
この前哨戦では犬山城は西軍の拠点になっていたが、徳川家康の東軍が岐阜城を落とした際に、無血開城されている。築城の時期を考えると、信長の天下統一戦と秀吉の小牧・長久手の戦いの時は今の犬山城の姿ではなかったと思われるが、信長・秀吉・家康という三英傑のすべてに関わった極めて珍しい城であり、結果的に犬山城を圧さえた人物が天下を取ったことになる。
こうした犬山城そのものの歴史や文脈もさることながら、江戸時代に花開いた車山(山車のこと)やからくりの文化も犬山が世界に誇るべき資源だ。
ユネスコ無形文化遺産の祭りでは…
犬山では13の町内が車山を保有している。犬山の車山は一般的な山車と比べると背が高く、およそ8m、3階建てビルに相当する高さだ。また、「上山」「中山」「下山」の3層に分かれており、「上山」にからくり人形の舞台が設置されているのも特徴だ。
毎年4月に開催される犬山祭は、犬山城の守護神である針綱神社を祀る神事。高いところでからくり人形の精巧な動きや物語を見せて神様に喜んでもらい、町の安寧を願う。そのために「上山」にからくり人形を置き、「中山」で操り手がからくりを操作し、「下山」には太鼓や笛を演奏するお囃子が乗るという3層構造になっているのだという。
あえて説明する必要はないかもしれないが、からくり人形とは、糸やゼンマイ、歯車などの仕掛けで動く人形のことで、江戸時代の初期から中期にかけて発展した日本独自の技術。東芝を創業した天才発明家の田中久重や、トヨタグループの創始者で「G型自動織機」を開発した豊田佐吉など、後の起業家にも大きな影響を与えた。


