自作AIアシスタントが次々と誕生

これらの取り組みを通じて「新しいAIサービスは便利だ」という認識が広がると、もう一段の飛躍が起きます。一部の社員が自らの手でAIアシスタントを作り始めたのです。特別なコードやプロンプトの技術がなくても、感覚的にアシスタントを作成できるAIサービスの特性をひとたび理解すると、社員自身による市民開発が次々と進みました。

そして、全社展開の開始から半年後には、DX経営推進室が促さなくても、部門・部署主体の取り組みが次々と立ち上がるようになっていきます。

長文の報告書や議事録を要点だけにまとめる「要約の達人」や、前任者の引き継ぎ資料をテキスト化して必要なときに参照できるAIアシスタントのように、現場の創意工夫から生まれたヒット作が次々と生まれていきます。

社員が自作したAIアシスタントは、社内のホームページやSNSを通じて共有され、横展開されていきました。AI関連の社内SNSチャンネルは、現在では月間約1000人が閲覧する、社内で最もフォローされているチャンネルのひとつに成長しました。

口コミと「社内インフルエンサー」の威力

ある部署で生まれた便利な使い方が、異動する社員とともに別の部署へと運ばれる。セミナーにリピート参加した社員が、いわば「社内インフルエンサー」となって周囲を巻き込んでいく。

「大規模にウェビナーやハンズオンセミナーを展開したことで、あらためてみんなにAIサービスを知ってもらい、口コミでどんどん広がっていきました」と中村氏は振り返ります。

社員のAIアシスタント開発を支えた要因について、宮島氏はAIサービスのUI(ユーザーインターフェース)にも触れます。

「一般的なチャットツールは、最初に『なんでもお聞きください』という空の画面が出てきますが、何を聞いたらいいかわかりません。一方、新しいAIサービスは、『こういう内容を聞きたいときは、このアシスタント』というユースケースが一覧で確認できます。私たちがデモを行うときも、『これだけ身近な使い道がある』と伝えることができます。そのわかりやすさも定着につながった要因だと思います」