「もしロシア国境警備隊に捕まったら…」

8月のプーチン大統領の択捉島訪問の印象について、前出の根室市民に話を聞いたところ次のような答えが返ってきた。

「一市民としては、安全に漁をさせてもらいたいというのが本音です。

根室市の基幹産業は漁業ですが、ロシア軍のウクライナ侵攻以降、コンブ漁船が貝殻島周辺などでロシア国境警備隊の臨検を受けるケースが増えました。違反などが見つかれば国後島の古釜布に連行されてしばらく帰れなくなるので、怯えている漁師もいると聞きます。

また、過去には北方領土付近で操業する漁船がロシア国境警備隊から銃撃を受け拿捕される事件も起きており、死者が出ています。

ロシアとしてはオホーツク海から太平洋に自由に航行できる原子力潜水艦のルートを確保しておきたいため、近年も国後島で軍事演習を行うなど、北方領土に対する実効支配を示す動きを強めているのが現状と言えます」

過去には銃撃事件、不法上陸も

死者が出た銃撃事件とは、2006年8月16日に発生した第31吉進丸事件のことだ。歯舞群島の水晶島付近の海域で操業中だった根室市花咲港所属のカニかご漁船がロシア国境警備局の警備艇に追跡され、貝殻島付近で銃撃・拿捕された。この時、頭部に銃撃を受けた日本人乗組員1人が死亡した。

この時の乗組員も国後島の古釜布に連行され、通称ムネオハウスと呼ばれる日本人とロシア人の友好の家に拘束された。乗組員の遺体は8月19日に海上保安庁の船によって日本に引き取られ、30日に船長以外の2乗組員が開放。船長が開放されたのは、10月3日になってからのことだった。同様の銃撃事件は2010年にも発生している。

また、2007年にはロシア人漁船員の納沙布岬不法上陸事件が発生。2007年4月8日付の北海道新聞で詳報されている。

記事によると、水晶島と貝殻島の中間付近で操業していたロシア漁船の29歳の一等航海士が、納沙布岬の舟揚場にゴムボートで上陸後、近くの土産物店で缶ビール1箱(24本入り)を購入し、帰ろうとしたところ、漁業者からの通報を受けて駆けつけた根室署員に入管難民法違反(旅券不携帯)の現行犯で逮捕された。

※北海道新聞「納沙布岬 ウニ漁ロシア人『ビール買いたい』 ゴムボートで上陸 入管難民法違反で逮捕」(2007年4月8日)

根室警察署納沙布駐在所
筆者撮影
根室警察署納沙布駐在所

北方領土付近では、日本人はロシア国境警備隊からの銃撃のリスクがあるのに対して、ロシア人は日本側から銃撃されるリスクは皆無であることも、こうした違法上陸を許してしまった背景にあるのではないか。