境界線を引き直して演出した人口増
不思議なことに、公式の統計では人口が増えている。
中国国営通信社の新華社は今年3月、こんな数字を並べた。5300棟を超える建物が並び、141万人が暮らし、669社のハイテク企業が拠点を構える。投資額は、2025年末までの累計で1兆元(約23兆7000億円)を超えた。
ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、当局は7年間で12万人が新しい住宅に入居したとしている。だが、その多くは外部から移り住んだ新住民ではなく、街を造るために取り壊された村から移された地元住民だ。
数字だけを追えば、何もなかった土地に都市がひとつ生まれたように見える。ところが、雄安新区と現在呼ばれる土地には、もともと100万人を超える人々が暮らしていた。
一帯にはもともと小さな農村が点在していたが、そこで暮らしていた人々がそのまま、「新都市の住民」に計上されている。2020年の国勢調査によれば、新区の常住人口は120万5440人。新華社が今年示した141万人と同じ常住人口の基準で比べれば、この5年あまりで増えたのは20万人ほどにとどまる。
「ほぼ全員が失敗だと考えている」
人が集まらないのには理由がある。雄安新区には、人が根を下ろす土壌がないのだ。
すべてを自宅周辺の街区で済ませる構想も虚しく、実際には高速道路も鉄道の接続も乏しいと米独立系ニュースメディアのセマフォは指摘する。
例えば、先に挙げた雄安駅。出で立ちこそ壮大だが、その所在地は新区内とはいえ、中心部から実に20キロも離れている。
大学や病院も移転に慎重だ。ブルームバーグによれば、北京の4つの大学は2022年に移転計画を打ち出したが、分校の設置に縮小した。
同じ空気は学生の間にさえ漂う。ブルームバーグは中国地質大学の1年生の言葉を紹介している。「北京に来るために受験を頑張ったんです。雄安に行くためではありません」。
雄安新区を研究するアメリカの都市計画学者アンドリュー・ストコルズ氏の見方はより厳しい。同氏はセマフォに対し、「中国で話す相手のほぼ全員が、雄安は失敗だと考えている」と語る。ただし、習氏の肝煎り事業である以上、そうした本音が公に語られることはない。

