なぜNHKは平気で名誉を毀損するのか

戦国武将等のゆかりの地を訪れると、「北条五代を大河ドラマに」「大河ドラマで宇喜多秀家を」など、各地で誘致運動が行われている。大河ドラマの影響は大きく、町おこしや観光誘致に直結するからである。そうした影響力は、各地から要望が寄せられているNHKこそが、よく承知しているに違いない。

秀長のお膝元、大和郡山市の「文化会館」はNHK大河放映中はドラマ館となっており、平日でも多くの人が訪れる。
撮影=プレジデントオンライン編集部
秀長のお膝元、大和郡山市の「文化会館」はNHK大河放映中はドラマ館となっており、平日でも多くの人が訪れる。

言うまでもなく、各地は大河ドラマの「正の効果」に期待するから、地元ゆかりの人物を取り上げるように要望する。だが、最後まで奮戦して戦死した人物を、あざとい裏切り者として描けば、地元にもたらされるのは反対に「負の効果」になってしまう。観光にマイナスになったり、町のイメージ悪化につながったりもしかねない。影響力があるとはそういうことなのに、NHKはなぜ歴史上の人物だからと平気で名誉を毀損するのか。

史実を歪曲する影響は、当該の人物にゆかりがある町にダメージをあたえるだけではとどまらない。過去の時代に対する根本的な誤解につながってしまう危険性がある。

他にもある「豊臣兄弟」のおかしな描写

2023年放送の「どうする家康」には、以下の場面があった。徳川家康(松本潤)が妻の築山殿(有村架純)から、「私たちはなぜ戦をするのでありましょう」と問われ、「考えたこともない」と答えたのだ。しかし、領国の境界が常に敵の脅威にさらされ、戦わなければ敵の侵攻を許すばかりか、配下の領主たちがすぐに離反してしまうのが戦国の現実だった。戦をする理由を「考えたこともない」武将など、たちまち滅ぼされてしまった。

また、家康が「民が苦しめば、隣国から奪い合うしかない」というと、築山殿は「奪い合うのではなく、与え合うのです」と答えた。現代なら理想かもしれないが、戦国の現実のなかではファンタジーにすぎない。ところが、ドラマでは家康も重臣たちも彼女の話に共感し、受け入れてしまった。こういう描写をすると、戦国という時代に対する誤解が広がってしまう。

「豊臣兄弟!」にも、戦国時代の常識を超越した描写があった。たとえば第17回「小谷落城」(5月3日放送)での、浅井長政(中島歩)の切腹シーン。長政の近くにいた小一郎(仲野太賀、のちの羽柴秀長)は、直前まで必死に「生きてくだされ」と訴えたのに、いざ腹を切る段になっても介錯を申し出ない。

長政がもう生きられないなら、その尊厳をたもつ方法は、あの時代においては介錯なのに、長政が腹を切って苦しんでいるあいだ、長政の妻の市(宮﨑あおい)に具にもつかないことを語っている。かなり時間が経ってから、市が呻吟する夫のもとに赴き、介錯したが、介錯とは女性の手に負えるものではなかった。これも当時の常識に照らせば、長政の名誉を毀損する描写だった。