異動ばかりでは人材が育たない
そのためには、専門家を長期的に育てる人事も必須だ。
例えば中国人民解放軍の変化を読み取るには、艦艇や航空機の数に加え、訓練、部隊配置、人事、装備などの継続観察が欠かせない。北朝鮮についても、政治、軍事、核・ミサイル、外交などを長期間追うことで、一つ一つの動きが持つ意味を過去と比較できる。
数年ごとの異動を繰り返していては、担当者が身につけた知識を十分に蓄積できなくなってしまう。政府は、国家情報局で採用され、同局を中心に勤務するプロパー職員の比率を徐々に高めるとともに、省庁を横断した人材育成を進める方針を示している。
この方向性はさらに進めるべきだ。ひとつの分野を長期間追い続ける「国家情報局の専門家」を育てられるかが、組織の分析力を左右することになる。
日本特有の「忖度」も壁となる
専門家が分析した情報を最終的に政策へつなげる段階で焦点となるのが、国家安全保障局(NSS)との役割分担である。
内閣府に置かれた国家安全保障局は、外交・防衛・経済安全保障などについて政策の企画立案や総合調整を担う。一方、国家情報局は政策判断に必要な情報を集め、分析する。
わかりやすく整理すれば、国家安全保障局は「政府としてどう対応するか」を考え、国家情報局は「いま何が起きているのか」を分析する役割を持つ。両者が緊密に連携すれば、海外で起きた変化を素早く政策へ反映できる。
政府も国会審議で、情報部門には客観的で中立的な視点が欠かせないとの考えを示している。これこそが、今回の改革を評価する上で最も注目すべき点だと筆者は思う。
例えば政府が、中国による台湾への武力行使について一定の見通しを持っていたとする。だがその後、中国軍の部隊配置や訓練、物資の集積などに普段と違う動きが現れれば、新しい情報に基づいた情勢の再評価を迫られる。
国家情報局は「官邸直属の情報機関」であり、首相や閣僚との距離が近い。重大な変化を素早く伝えられることは大きな強みになる。その強みを生かすために重要なのが、官邸の予想と異なる動きが現れた場合の対応だ。
政府がそれまで考えてきた見方と違っていても、集めた情報から別の可能性が見えてきたのであれば、忖度せず率直に伝えなければならない。はたしてそれができるだろうか。
各省庁の情報を一カ所へ集めることは、日本のインテリジェンス改革の出発点となる。その上で、情報を正しく評価し、政府の予想と異なる内容であっても政策決定者へ伝えられるか。国家情報局がその役割を果たせるかどうかが、改革の成否を占うこととなるだろう。
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