上に伝達されるほど情報は要約される

そしてその結果を首相や閣僚へ届ける過程では、情報の選別も避けられない。政策決定者が各機関から集まる膨大な報告のすべてに目を通すことは現実的に難しく、重要度を判断して整理する必要がある。

私は自衛隊で情報業務に従事し、収集された情報を整理して報告書にまとめる仕事に携わった。その経験から実感したのは、情報は上級組織へ伝達されるほど選別され、要約されていくということである。

現場では小さく見えた変化が、後から振り返れば重大な兆候だったという場合がある。反対に、大きな変化に見えた動きも、ほかの情報と照合すると通常の活動だったとわかることがある。何を重視するかという判断には、対象国や組織を長期間観察してきた専門家の知見が欠かせない。

一方で、分析する側が一つの見方に傾けば、それに沿った情報を過度に重視してしまう危険性も生じる。2003年のイラク戦争では、イラクが大量破壊兵器を保有しているとの評価が軍事行動をめぐる大きな判断材料となったが、戦後の調査で備蓄された大量破壊兵器は発見されなかった。

この教訓を踏まえれば、最も可能性が高いと考える見方だけを示すのではなく、その根拠や情報の確かさ、ほかに考えられる可能性も政策決定者へ伝えることが重要だ。そのためには各省庁の情報を集めるだけでなく、それを評価できる人材が不可欠になる。

縦割りの弊害を持ち込まないために

ここで日本固有の課題として浮かぶのが、省庁間の縦割りだ。

日本のインテリジェンス機能は、複数の省庁や機関に分かれて発展してきた。それぞれが独自の任務や情報源、人事制度を持ち、必要とする情報にも違いがある。

国会審議でも政府は、各機関がそれぞれの省庁の仕事に必要な情報へ取組を集中させがちになるという課題を認めている。新しい組織へ各省庁から職員を集めても、出身組織の視点をそのまま持ち込めば、従来と同じ縦割りが残る可能性がある。

国会議事堂
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一方で、各省庁で培われた専門性は大きな強みになる。防衛省出身者は軍事、外務省出身者は外交、警察出身者は国内治安について知見を蓄積している。こうした専門性を生かしながら、軍事、外交、国内情勢などを組み合わせて分析できる体制を築くことがカギになる。