「念のため確認してもいいですか」
控えめな人は話し上手という印象はあまりないかもしれません。
けれど「どんな言葉を使うか」にはとても慎重です。
思ったことを勢いで口にする前に、「この言い方で相手はどう感じるだろうか」と一度立ち止まることができるからです。
そのワンクッションが周囲との関係性を確実に守っています。
たとえば、誰かのミスに気づいたとき、相手によっては「それ間違ってますよ」と伝えることももちろんあるでしょう。でも控えめな人は相手を見ながら「念のため確認してもいいですか」「私の理解が違っていたらすみませんが」と言葉を添えられます。
内容は同じでも受け取る側の衝撃を和らげることができます。相手は「責められた」というより「助けてもらった」と受け止めやすくなるのです。
こうした言葉選びは優しさというより「配慮の技術」に近いと言えます。
相手のプライドや立場、今の心理状態を読み取り「必要以上に傷つけない表現」を選んでいます。
興味深いのは、配慮の技術が高いこの人が、決して何も言わない人ではないという点です。
選び抜いた言葉で、言うべきことはきちんと言う。
「あの人の言葉はキツくないけれどなぜか納得できる」
「指摘されても嫌な気持ちを引きずらない」
そんな印象を持たれる人は、組織の中でとても重宝されていきます。
研修で書類を忘れた私に、そっと耳打ち
その選び抜いた言葉を、どこで使うか、その使う場所やタイミングにも敏感です。CA時代のチーフ昇格研修のときのことです。
私はその研修を受ける立場でした。事前提出が必要な書類があったのですが、しかしながらその存在自体をすっかり忘れていました。
気持ちだけは前向きで「よし! 今日からしっかり学ぶぞ」と意気揚々と会場に入り席につきました。
そのとき、サブのトレーナーの方がそっと私の横に来て、周囲には聞こえないように耳打ちでそっと告げました。「○○の書類は今持ってきていますか?」と。
その一言で「しまった」と私は気づきました。
けれど不思議と大きなショックはありませんでした。皆の前で指摘することなく、「確認」という、こちらの状況を察しながら最小限の言葉で要点を届けてくれた、その配慮が瞬時に伝わってきたからです。
もしここで「提出書類を忘れたんですか?」とみんなの前で言われていたら、おそらく私は、恥ずかしい気持ちと自分を責める気持ちでいっぱいになり、その後の研修内容なんて聞ける状態ではなくなっていたと思います。
サブトレーナーの方はさらに「大丈夫ですよ、用紙は用意するので休憩時間に書きましょうか」と解決策まで提示してくれました。

