優生学とどう向き合うか
橘:「日本人とはなにか?」というテーマを論じるのなら、日本人あるいは東アジア系というヒト集団の遺伝的な傾向を前提にしなければならないと思うのですが、ほとんど無視されているというのが現状ですよね。
安藤:僕は今、行動遺伝学者として優生学とどう向き合うか、どう理論的に反駁できるかについての本を書いています。学力の遺伝が、日本では学力差になり、収入差や階層差に結びついていく。「遺伝を言い出すと優生学を振りかざすことになる」という批判に僕がどう釈明するか、という本です。
この本で「学力の差なんて社会に出たらほとんど問題ないじゃないか」ということを示したい。それはあらゆる差別に通じます。「知能は高いほうがいい、だから低いとされる側はやばい」と、みんながどこかで本音で思っている以上、この問題は解決できません。
だから誰かが踏み絵を踏まなきゃいけない、という覚悟も決めている。それを、あっけらかんと「遺伝ってすてき」と書き切ってしまおうと思っているんです。
橘:それは楽しみです。人間や社会について、タブーを乗り越えて、遺伝や進化のような自然科学の知見と整合性のある議論ができるようになるといいですね。その意味でもお二人には期待しています。今日は興味深いお話をありがとうございました。
(構成=ライター・編集者、井上英樹)
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