「当選したら終わり」にしなかった

就任2日目、マムダニは市民参加を担う部局を市に置いた。選挙が終われば消えてしまうはずのつながりを、市政のなかに残そうとしたのである。

4月には、この部局が「Organize NYC」を始めた。市職員やボランティアが住宅地を訪ね、家賃安定化住宅の家賃改定をめぐる公聴会への参加を呼びかける。借家人だけでなく家主にも声をかけ、証言内容は誘導しない。選挙でやっていたことを、市役所まで始めたのである。

ここには難しさがある。市長の政策を応援する人を増やすだけなら、後援会と変わらない。自分たちで要求をつくる人が増えれば、その要求が市長の考えと一致するとはかぎらない。

市民参加と政治動員とを分ける条件は、市役所の外側に独立した市民組織が残っていることである。教会や学校を基盤に地域団体を束ねるMetro IAFは、選挙前に1万人以上の住民の声を聞いて要求をまとめ、候補者と交渉した。当選後も応援団になったわけではなく、住宅政策をめぐる交渉を続けている。約束が不十分だと考えれば批判的な立場をとる。

米国の投票所
写真=iStock.com/SDI Productions
※写真はイメージです

労働組合も「市長応援団」ではない

マムダニが大事にしているのは、法令順守と丁寧な対話だ。

2026年8月には、市長と労働組合の緊張関係がよく見える出来事があった。

市議会が7月、年収3万ドル台前半(約480万~560万円)で働く公立学校の教員補助職およそ2万5000人に最大1万ドル(約160万円)を支給する条例を、49対0の全会一致で可決した。労働組合も強く後押ししていた。

ところがマムダニは、賃金は議会が上から決めるものではなく、市と労働組合の団体交渉で決めるべきだとして異論を唱える。賃上げそのものを止めたわけではない。署名も拒否権行使もせずに条例を成立させたうえで、手続きの適法性を法廷で争っている。

政治家が労働者と組合を迂回して労働条件を決める前例をつくってはならない、というのが市側の言い分である。一方、教員組合は、マムダニが選挙中にこの支給策を支持していたとして反発している。