“ちい活”のファンは何度も映画館へ

逆に、ここまでの3回で特典が終わりであれば、これまで高水準をキープしていた興行の流れと勢いは変わる可能性がある。

ただ、もうひとつ付け加えるとすれば、『ちいかわ』が特徴的なのは、女性層を中心にしたファンダムの熱量の高さだ。キャラクターたちが一生懸命生きる姿に、共感や感情移入を通り超えた愛が生まれている。それは、親や親戚が子どもを見守り、世話をして育てるような視線であり、物語の世界を一緒に生きているのだ。

そんなファンが多くいる本作の興行ポテンシャルは計り知れない。それ故に、たとえ特典が終わっても、別の力が働く可能性もある。この先の興行がどのように動くかは予想が難しい。

ジブリ後の夏の定番アニメになるか

両作を比較してきたが、映画業界のもうひとつの視点として、『ちいかわ』は『名探偵コナン』になれるのか、という期待がある。

TVerプレスリリースより、アニメ『名探偵コナン』
TVerプレスリリースより

夏休み興行は、映画会社にとって年間を通してもっとも重要な位置づけの興行のひとつになり、ファミリー層から若い世代向けの1年の勝負をかける大作を各社がブッキングする。東宝の昨夏は『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』がその大役を担っていた。

振り返れば、かつて夏休み映画といえばスタジオジブリのアニメ作品だった。1986年の『天空の城ラピュタ』以降、ほぼ1〜2年毎に7〜8月に公開される夏休みアニメの定番となり、2014年の制作部門解散以降は、“次のジブリ”が待たれてきた。

新海誠や細田守の新作は数年ごと

これまでに、新海誠監督や細田守監督の作品のいくつかがその時々の夏休みアニメになった。しかし、新作が出せるのは数年ごとという公開スパンが要因のひとつになり、ジブリに代わるスタジオやタイトルは出てきていない。

そんななか、東宝は初の劇場版となる『ちいかわ』に今夏を託し、まずは大成功を収めた。次に求められるのは、GW映画の定番の『名探偵コナン』のように、毎年新作が公開され、固定ファンに支えられる安定した大ヒットシリーズになることだ。

『ちいかわ』には、ファンの間で映画化への期待が高い原作エピソードがいくつもある。夏休みアニメの定番になるポテンシャルは高いだろう。興行関係者からは、『ちいかわ』が“夏の名探偵コナン”になることが期待されている。