意外に残酷な世界観の『ちいかわ』

SNS発の漫画からショートアニメになった『ちいかわ』は、かわいいビジュアルのキャラクターたちによる日常系の何気ない話が物語のメイン。子どもたちが楽しめる、一見子ども向け作品だ。同時にそこには、幼い子どものようなキャラクターたちがお互いを思いやる心やその間の友情や絆を、少ないセリフの間や前後の行動の余白から考えさせる物語性があり、女性を中心に若い世代のファンがついている。また、自然の摂理や残酷な生き物の捕食の話がさらりとエピソードに入り、その残酷さとビジュアルのギャップが一定層の大人たちも掴んでいる。

両作とも、ベースは子ども向けの作品でありながら、そこに大人も楽しめるそれぞれの要素がクオリティ高く埋め込まれた、尖った作品性がある。それがファミリー層だけでなく、若い世代をはじめとする大人層を取り込む。そんなファンダム構成がある。

両作の劇場版としての相違点

『ちいかわ』と『名探偵コナン』には対照的な点もある。

まず『名探偵コナン』にあって『ちいかわ』にないのは、歴史を重ねてきたファン層の厚さだ。1994年に漫画連載がスタートした『名探偵コナン』は、テレビアニメは1996年から放送され、劇場版アニメ第1作は1997年に公開された。

以降、劇場版は毎年公開され、今年で29作目となり、2023年の26作目から4年連続で100億円を突破。コロナ後のアニメブームも追い風になり、いまやファンだけでなく、流行に敏感な一般層が毎作映画館に足を運ぶ。そんな確固たる下地がある。

TVerプレスリリースより、アニメ『名探偵コナン』家族がテーマの「想い紡ぐ愛の記憶!家族セレクション」全37話を配信(9月13日まで)
TVerプレスリリースより、アニメ『名探偵コナン』家族がテーマの「想い紡ぐ愛の記憶!家族セレクション」全37話を配信(9月13日まで)

一方、2020年にSNSで生まれ、2022年のテレビアニメ化でブレークし、今回が劇場版1作目の『ちいかわ』には、ファンダムの“深さ”がある。公開前のタイアップの数は異例の多さであり、多くの企業とのコラボグッズや、限定ショップ、イベントなどがファンを盛り上げた。

「ちいかわらんど」はどこも大盛況

全国16店舗のオフィシャルショップ・ちいかわらんどは、基本的に整理券入場になるが店舗には常に入場行列ができ、映画館限定で発売された専用のポップコーンボックスとドリンクカップホルダーは早々に完売する劇場が続出。東京スカイツリーのコラボイベントは、予約が取れないというファンの悲鳴が上がっている。

さらに、とくに熱狂的なファンは、台湾や香港のコラボイベントにまで足を運び、限定グッズを入手している様子をSNSで発信しており、その数は少なくない。そのような熱量高い“推し活(ちい活)”がSNSで広く伝播し、さらなる熱を生み出している。

香港での『ちいかわ』イベント、2025年
写真=iStock.com/LewisTsePuiLung
香港での『ちいかわ』イベント、2025年 ※写真はイメージです