出版界は、今や電子コミックという「時の氏神」に足を向けて寝られそうにない。

ただ、漫画に頼り切る「一本足打法」には、リスクが伴う。すでに電子コミックは伸びが鈍化する兆しが見え始めており、「漫画コケたらみなコケる」となりかねない。

電子で伸びる大手、紙から抜け出せない中小

市場全体では一息ついているとはいえ、出版界の内実を探れば一段と深刻さを増していることに気づく。

漫画という切り札を持ち電子コミックを発行できる大手出版社と、魅力的なコンテンツに恵まれずデジタル投資もままならない中小・零細出版社との格差が広がり、二極化が急速に進んでいるのだ。

かつて出版社の収益と言えば雑誌や書籍の出版事業が大半を占めていたが、大手出版社は2010年代半ばにそろりと電子コミックに進出し、さらに漫画作品のアニメ化やゲーム化などライツビジネスに目覚めて積極的に手がけるようになった。

講談社を例にとると、2014年は総売上高1191億円のうち、印刷版932億円(78%)に対し、電子版+ライツビジネス等は162億円(14%)にすぎなかったが、2025年になると総売上高は1692億円に伸び、このうち印刷版は430億円(25%)と半減する一方、電子版864億円(50%)とライツビジネス285億円(17%)を合わせて1147億円(68%)と急増している。

収益構造がまったく様変わりしてしまったのである。

「書籍と雑誌の大手出版社」は、「電子出版とライツビジネスのコンテンツ企業」へと変貌したといってもいい。

だが、昔ながらの印刷版中心のビジネスモデルから抜け出せない中小・零細出版社は、こうはいかない。電子コミックに比べ電子書籍や電子雑誌の市場はたいして伸びておらず、印刷版を単に電子化しただけでは売り上げを増やすことにはつながりそうにない。

約3000社と言われる出版社の大半は中小・零細出版社で、苦境にあえいで次々に姿を消すようなことになれば、出版文化の多様性が失われ、読者の選択肢は確実に狭まっていく。出版界にとって、きわめて重大な事態に発展しかねない由々しき問題なのである。

一口に出版不況と言っても、出版市場の収縮で業界全体が青ざめた2000年代と、大手出版社と中小・零細出版社に二極化している現在とは、意味合いが違うことに留意しなければならない。

『週刊少年ジャンプ』の100万部割れは、「出版不況の象徴」のようにも見えるが、それほど単純な話ではない。出版ビジネスの変貌を想起させ、ひいては印刷メディアの行く末を案じざるを得ない「事件」なのである。

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