中国と組んだインドネシアの「時限爆弾」

中国のインフラ事業といえば、国境を越えて技術を持ち込んだインドネシアが思い浮かぶ。

インドネシアでは2023年、東南アジアで初めて高速鉄道が開通した。首都ジャカルタと第3の都市バンドンを結ぶ「Whoosh(ウーシュ)」の事業費は、72億ドル(約1兆1400億円)に上る。

インドネシアの高速鉄道「Whoosh(ウーシュ)」
インドネシアの高速鉄道「Whoosh(ウーシュ)」(写真=Muhammad Bintang Nurandi Putra/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

2015年の入札では日本のほうが低金利の融資を提示していたが、インドネシアは中国を選んだ。ブルームバーグによると、事業費の75%は中国の融資でまかなわれている。

この事業に限れば、融資の条件はさほど厳しくない。過大な融資で相手国を返済不能に追い込む「債務の罠」の批判は当てはまらないと、米国際政治誌のフォーリン・ポリシーは評している。

とはいえ、事業は採算ラインから程遠い。完成は当初の2019年から数年ずれ込み、費用は10億ドル以上膨らんだ。2025年の乗客数は約620万人で、日本の協力で建設されたジャカルタの地下鉄が同じ年に4500万人を運んだのと比べると、桁がひとつ違う。2026年4月に債務再編案がまとまり、8月にはインドネシア政府が運営会社の60%持ち分を引き取る方針が公表された。

インドネシア当局は開業前から損益分岐点到達まで40年かかると認めていた。運営費こそ運賃収入で賄えているものの、利払いや為替差損、減価償却で赤字だ。インドネシア国有鉄道会社の社長さえ、この事業を「時限爆弾」と呼んだ。

スリランカが陥った「債務の罠」

インドネシア以外でも、中国が技術輸出するインフラプロジェクトを通じ、途上国に広く貸し付けが行われている。カタールのアルジャジーラによると、2025年に途上国が中国に返済すべき債務は合計350億ドル(約5兆5700億円)にのぼった。

資金の返済に行き詰まると、どうなるか。巨額の債務を返済できなくなったスリランカ政府は、ハンバントタ港の運営権を99年間、中国企業に貸与した。「債務の罠」の典型例とされる。

こうして海外のインフラ事業でも債務の重荷が表面化している中国だが、国内でも無理な高速鉄道計画により、赤字を垂れ流している構図だ。対外的な「債務の罠」とは性質が異なるものの、無計画な事業の赤字を税金で補填している構図は、ある意味では中国が自ら陥った債務の罠といえよう。

習近平政権としては、鉄鋼供給の受け皿とすること、雇用を生み出すことに加え、赤字に目をつぶる理由がもう一つある。同化政策だ。

蘭州―ウルムチ線は、甘粛省の蘭州と、新疆ウイグル自治区の中心都市ウルムチを結ぶ。アジア・センティネルは、辺境を貫くこの路線が採算に合うかどうかに、中国共産党は関心を払わないと指摘する。

その真の狙いは、漢族の政治支配の最西端とされてきた蘭州と新疆との時間的・地理的な距離を縮めることにある。これは、ウイグル族が多数を占める新疆の住民を同化する「中国化」の柱だ。

仮に同化が進まなくとも、この高速鉄道は警察や軍を送り込む直通ルートとなる。