旗振り役の習近平が認めた過剰投資
しかし、建設の旗を振ってきた当人が、ここに来て急ブレーキを踏んだ。
習近平氏は、共産党の幹部を育てる中央党校での講演で、「一部の高速鉄道駅や都市鉄道路線は、完成後に運営上の困難に直面している」と認めた。高速鉄道以外にも過剰投資は顕在化しており、「一部の大型競技場や展示施設、博物館は利用が低調で、一部の工業団地は遊休化している」とも加えている。今年1月、香港英字紙のサウスチャイナ・モーニングポストが人民日報を引用して報じた。
必要のない路線をつくりすぎた。その認識に、ようやく体制のトップが至った形だ。
同じ時期に、経済政策の司令塔である国家発展改革委員会は、都市間鉄道の名目で高速鉄道や地下鉄をひそかに建設することを固く禁じた。
これまで一部の地方政府は、承認基準の厳しい地下鉄をつくる目的で、審査を通りやすい都市間鉄道を抜け道に使ってきた。
新しい都市間鉄道には、年1500万人という需要見通しが要件として課された。開業から5年で旅客数が予測の半分に届かない地域は、次の着工を認めない。
承認を厳しくすれば、これから積み上がる投資は抑えられる。だが、すでに抱えた赤字と負債をどう減らすのかは、依然として答えが出ていない。
同じ轍を踏み続ける中国高速鉄道
だが、振り返れば5年前にも同じことが起きていた。
2021年3月、内閣にあたる国務院がすでに同じ警告を発していた。オブザーバー・リサーチ・ファウンデーションは、利用が輸送能力の8割に満たない区間では、並行する路線の新規建設が止められたと指摘する。公表からわずか3日で、1300億元(約3兆700億円)を超える事業が止まったが、この条件を逃れた路線網はその後も広がり続けた。
ほかに有効な手は見出せていない。運賃を上げれば、自ずと客足が遠のく。建設費の負担を地方に転嫁すれば、地方財政がひっ迫する。課題が山積するなか、収益性確保の具体策を欠く。
1000人分の座席に、わずか20人の旅客が列車を待つ富順駅。その光景に、無秩序に拡大した中国高速鉄道網の不合理が凝縮されている。


