シャインマスカット・バブル後

このプレミア価格で、一時代を築いたのがシャインマスカットである。いち早く栽培を軌道に乗せた雲南省や浙江省などの農家の中には、1房数千円というプレミア価格で売りさばき、わずか数年で数千万円から億単位の利益を叩き出して高級車や豪邸を手にする「シャインマスカット長者」が続出した。

しかし、その「シャインマスカット・バブル」も今は昔である。中国国営の経済チャンネル「央視財経」や大手経済メディア「界面新聞」などの報道を総合すると、中国におけるシャインマスカットの作付面積はこの数年で10倍以上に膨れ上がり、結果として2022年に供給過多による価格暴落を引き起こした。

これで見切りをつけ始めた現地の農家や業者たちは今、「次なる一獲千金」のターゲットとして、日本のブランドイチゴに目をつけている。

新疆ウイグル自治区の屋台。その温暖な気候を活かして、中国最大の果実供給地の一つになっている。
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新疆ウイグル自治区の屋台。その温暖な気候を活かして、中国最大の果実供給地の一つになっている。

日本の最新品種を手に入れる方法

では、彼らは具体的にどのようにして日本の最新品種を手に入れているのか。

例えば、日本の「メルカリ」や「ヤフオク!」などをみると、「種苗登録品種」と銘打たれた苗木が出品されていることが確認できる。これらを在日中国人や留学生などのコミュニティを通じて購入し、国際郵便の品目を偽って発送したり、帰国する人のスーツケースの底に忍ばせる「運び屋」を使って中国へと密輸することは十分に考えられる。実際に、中国には苗木専門の個人輸送業者などもある。

その後、日本の苗木は中国で売られることになるわけだが、かつて日本のメディアで中国のECサイト「淘宝(タオバオ)」で扱われていると報道された影響か、今ではそれら大手通販では見かけることがない。しかし、中国最大のフリーマーケットアプリ「閑魚(シェンユー)」を見ると未だに取り扱いがあることを確認できる。

「閑魚」は、アリババグループが運営する中国最大のフリーマーケットアプリだ。アプリ上では、日本の高級白イチゴ「天使の果実」や「初恋の香り」をはじめとする最新ブランドの苗が、安いものは数百円で叩き売りされている。もちろん、これらは本来、種苗法によって守られているはずのものである。

中国のフリマアプリで売られている天使の果実(左)と紅ほっぺ(右)の苗木
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中国のフリマアプリで売られている天使の果実(左)と紅ほっぺ(右)の苗木。