以前から独立の動きを弾圧してきた
そんな立場を取り続けている中国政府がなぜ今、改めて「民族団結進歩促進法」を制定したのか。すでに中国の公安は、チベット自治区など一部地域でのデモ行為を、無差別な発砲等によって鎮圧していると報告されています(注4)。こうした鎮圧の法的根拠について、中国当局からは正式な発表がありませんが、おそらくは中国の国家安全に危害を与える罪(中国刑法第102条以下)、暴力行為が発生している緊急時に人民警察は武器を使用できるという規定(人民警察法第10条)を根拠としているものと思われます。
つまり、少数民族の独立に関係するデモ行為などは以前から強く弾圧されてきたのであり、わざわざ新しく「民族団結進歩促進法」を制定する必要はなかったとも言えるのです。
習近平肝いりの民族政策
中国政府は、「民族団結進歩促進法」を制定した理由を以下のように説明しています。
1つ目は、習近平・国家主席肝いりの民族政策であるためという理由です(注5)。習近平・国家主席が就任した後の2018年3月11日に、中国では憲法が改正されました(同日公布・施行。なお、このとき日本では国家主席の任期撤廃のみが大きく注目されていました)。このとき改正中国憲法には「中華民族の偉大な復興」という言葉が規定されました(前文第10段落)。この「中華民族の偉大な復興」を具体的に目指すために、「民族団結進歩促進法」を制定したというのです。
「中華民族の偉大な復興」とは要するに、中華民国時代に「対日戦争の中、全ての『中華民族』が一体となって目標に向け邁進した」ことをもう一度行おうというものです。現在の目標とは、「中華民族」が一体となって世界経済第一位の国家を目指すなど、中国が世界から注目される強国になるといったところでしょうか。

