「正しい判断」より「早い判断」が重要
ここで重要なのは、「正しい未来予測」が存在していたわけではないという点だ。EV市場が再拡大する可能性は十分にある。しかし、戦略において重要なのは、「未来を完璧に当てること」ではない。変化に対して、どれだけ早く適応できるかなのである。
つまり、「正しい判断」よりも、「早い判断」の方が重要になる場合がある。
特に、新・帝国主義の時代では、この傾向がさらに強まる。
なぜなら、現在の世界では、アメリカの政権交代、中国経済の減速、AI革命、エネルギー価格変動、地政学リスクなどによって、前提条件そのものが高速で変化しているからだ。
つまり、「安定した前提」が消滅しているのである。その中で、「慎重に検討してから決める」という戦後日本型組織モデルは、むしろ致命的な弱点になる。
『作戦要務令』は、この問題をすでに1930年代に理解していた。戦場では、迷った瞬間に主導権を失う。そして、主導権を失った組織は、防御側へ追い込まれる。
ここで重要なのは、「遅れ」は単なるミスではないという点だ。それは構造的敗北なのである。だからこそ、『作戦要務令』は、状況判断、決心、命令、監督を一つの循環として高速化しようとした。
つまり、戦略とは、「正解探し」ではない。変化する現実の中で、いかに早く動けるかという問題なのである。

