プロ副業LP

正社員の副業を容認する企業は、いまや64.3%に達する(2025年、パーソル総合研究所「副業の実態・意識に関する定量調査」より)。実際に副業を実施している人も年々増加しており、特に若い世代でこの傾向は顕著だ。副業の時給も上がりつつあるというが、一方で「短い時間で大きく稼げる人」とそうでない人の格差も開きつつある。この両者を分けるものは何なのか。会社員時代に副業を含めた年収1億円を達成した起業家・著述家のmotoさんに「サラリーマン副業の心得」を聞いた。

しっかり稼ぎたいなら、自分で仕事を取りに行く「プロ副業」

「副業で何をするか、を考える前に、まず『なぜ副業したいのか』を自問自答したほうがいいでしょう。それによってどんな副業を選ぶのかが変わってくるからです」

motoさんは、副業についてまず考えるべきことは「目的」だと語る。「経験」を重視するべき転職と違い、多くの人は副業で「収入」を求めるもの。問題は「いくら欲しいのか」だ。月2万~3万円程度のお小遣いが欲しいのなら、飲食店での深夜バイトでも、クラウドソーシングで簡単な仕事を受けるのでもいいだろう。いわゆる時給で働く「労働集約型」の副業だ。

一方で、「やるからにはしっかり稼ぎたい」「第二の本業にしたい」と考えているのなら、知人の仕事をプロジェクトごと請け負う、自分でサイトやサービスを立ち上げ収益化するなど、自分の専門性やスキルを生かした「プロ副業」の道を選ぶべきだ。「私も会社員時代、プロ副業で大きく稼いだ」とmotoさんは言う。

「プロ副業は、割り振られた仕事をただこなすのではなく、自分で仕事を取りに行くスタイルが基本になります。例えば、友人や知人に『こういう仕事だったら副業で受けられますよ』と売り込む、あるいは自分で一から商品やサービスを作ってネットで販売する。労働集約型の副業とは性質が全く異なるのです。また、こうした自分の専門性を生かす仕事は、本業と人脈やスキルが重なる部分が大きいので、自身のキャリアへプラスに働くこともあります。最初は労働集約型の副業から始めても構いませんが、いずれはプロ副業に移っていくほうが望ましいと思います」

「自分に専門性なんてあるのだろうか」と思う人もいるだろう。しかし、motoさんは「副業のタネになるスキルは意外と身近に転がっている」と話す。

「職場の同僚や友人で副業をやっている人に何をしているのか聞いてみてもいいし、フリーランスで仕事をしている知人に『何か自分に手伝えることはない?』と聞いてみてもいいでしょう。自分のスキルの価値は、他人のほうが客観的に見てくれるものです。また、クラウドワークスのような副業サイトに登録してみるのも一つの手です。登録フォームには『できること』の項目が並んでいます。営業、資料作り、その中でもパワポができるのかイラストが描けるのか……ポチポチ押していくと、外で必要とされる能力は何なのか、自分に何ができるのかがわかってきます。もし押せるものが何もないなら、それはもっと今の仕事を頑張りましょう、ということ。その場合は、まず本業で力をつけることに注力したほうがいいでしょう」

絶対に避けるべきなのは「本業に支障をきたす」こと

一方で「副業で絶対に避けるべきことがある」とmotoさんは警鐘を鳴らす。それは「本業に支障をきたす」ことだ。特に時間を切り売りすることになる労働集約型の副業は要注意だという。

「労働集約型は基本的に単価が安くなるし、働いた時間の分しかお金がもらえません。いわば自分の時間と体力を削って稼ぐスタイルになるので、やりすぎると本業に悪影響が出てくるのです。最も大切につくり上げていくべき本業のキャリアに傷がつくことになるので、まさに本末転倒といえるでしょう」

特に責任感の強い人は気を付けなければならない。motoさんの知人で、副業の負担の大きさが心身に悪影響を及ぼし、本業も休業することになってしまったケースもあったという。

「副業なのだから、『嫌になったのなら辞めればいい』と思いますよね。でも、一度動き出したプロジェクトにおいて、真面目で責任感の強い人ほど途中で抜け出すことはできません。結果として、『辞めます』と言いだせないまま追い込まれてしまうのです。繰り返しますが、副業をするうえで守るべきなのは、何よりも『本業に支障をきたさないこと』。仕事を引き受ける前に、人間関係や業務負担の大きさをよく見極めてほしいと思います」

年収交渉記事中

moto(本名・戸塚俊介)
HIRED株式会社 代表取締役

1987年長野県佐久市生まれ。新卒で地方ホームセンター(綿半ホームエイド)へ入社後、マイナビ、リクルートなど8社へ転職し、営業部長や事業責任者を務める。2018年に副業で立ち上げた転職情報メディア『転職アンテナ』が評判に(2021年に会社売却)。現在は2019年に創業した転職広告会社HIREDの代表取締役。著書『転職と副業のかけ算』は発行部数10万部超。2026年4月に転職を前提としない無料のオンライン転職相談サービス「エージェントの窓口」を立ち上げ、累計申込者数は2000名を突破(2026年8月現在)。

「給料以外に稼ぐ」経験と「つながり」が財産になる

ここまで「お金」を軸に語ってきたが、実は副業で得られる最大の収穫は、お金そのものではないかもしれない。その1つが、「給料以外にお金を稼ぐという感覚を得ること」だ。

「普段給料をもらって仕事をしていると、自分の仕事のどんな部分がどれくらい売り上げに直接かかわっているのか、手応えが得られないことも多いと思います。しかし、副業は基本的に『この作業・プロジェクトを請け負った』ことの対価として報酬を受け取ります。そうすると、自分の仕事がいくらくらいで評価されるのか、という感覚を養うことができます。この感覚が持てると、本業で転職活動するときにも、年収交渉などでお金の話をすることに恐怖感や忌避感が薄くなるのです。自分の腕一本でお金を稼ぐ経験をするのは、ある意味で報酬以上に大きな財産になると思います」

そしてもう1つの収穫が、社外との「つながり」だ。

「キャリアを構築していくうえで、人のネットワークはとても重要です。僕自身、転職回数が多いので、前の会社、その前の会社と、つながりがどんどんできていきました。『そういえばあの会社のとき、こんなことをやっていたな』と思い出して連絡して、そこからまたビジネスが生まれることもあります。副業でクライアントと仕事をしていれば、独立したときの仕事につながることもある。副業先から『うちで正社員をやってみない?』と声がかかって、キャリアにつながっていくこともよくあることです」

本業の知見があるから副業ができ、副業で得た経験や人脈が、本業でのキャリアアップや転職の選択肢にもなって返ってくる。そんな相乗効果を生む副業こそが理想形だ。

「本業と副業が掛け算されて回っていくのが、理想的な副業のあり方です。仕事は人のつながりの中で生まれて、回ってくるもの。ぽっと出の人に仕事がどんどん降ってくることはありません。だからこそ『紹介される人』になることが大事です。『これだったら、あいつができそうだな』と名前が挙がる側にいれば、仕事には困らない。お客さんがまたお客さんを呼んできてくれるのです」

AIに奪われないのは「仕事を取ってくる力」

ただ、副業において避けて通れないのが「AI」の脅威だ。簡単なライティングやイラスト、デザインなど、駆け出しの副業者が請け負ってきた低単価の仕事は、すでにAIに置き換えられつつある。AI時代にも価値を保てる副業とは何か。motoさんの答えは明快だった。

「プロ副業の話ともつながりますが、最も重要なのは営業力、つまり仕事を取ってくる力です。どんなに進化したとしても、AIには仕事は取れないからです。もらった仕事を引き受けているうちは、『それ、AIでいいよね』と言われた瞬間に、需要がなくなってしまいます。大本のところから仕事を取ってくること。これが人間に残される最も重要な能力になっていくはずです」

AIを使う側に回れるか、AIに置き換えられる側にとどまるか。その分岐点は、お金を出す人との距離にあるという。

「常に発注者の近くにいて、必要とされるときに声がかかるところにいる力が重要。言い換えれば、『この人に仕事をお願いしたい』と思われる信用力、信頼力です。人を紹介することもAIにはできません。『この仕事なら、あの人がいい』という案は、AIからは出てこないのです。営業力と信用力、信頼力。自分なりのネットワークを通じて、この3つをしっかり育むことができれば、どこの会社でも転職できるし、将来困ることもないでしょう。それこそが自分の一番大きな市場価値になると思います」

副業は、単なる小遣い稼ぎの手段ではない。自分の価値を自分で見極め、自ら仕事を取ってくる訓練の場であり、キャリアの選択肢を広げる投資でもある。それが結果として、AI時代を生き抜く最強の武器にもなるのだ。

(取材協力=戸塚俊介 執筆=田中裕康 撮影=大村洋介)