世界のトップクラスから映像で授業を受ければいい

全国で教員不足が深刻化している。しかし、数を増やす必要はない。AI時代になったことを考えると、むしろ教員不足は日本の教育を根本から見直す絶好のチャンスである。

全教(全日本教職員組合)は、全国の地方組織に教員未配置について聞き取り調査を実施している。回答に応じた36都道府県と12政令市を集計すると、5月1日時点での欠員数は、小学校1478人、中学校1184人、高校418人、特別支援学校514人などで、計3662人にのぼった。

各都道府県の教育委員会は、教員免許のない人に例外的に「臨時免許」を交付して欠員を埋めようとしている。臨時免許があれば最長で3年、授業を担当できる。しかし、しょせんは焼け石に水だ。2024年度の公立学校の教員の採用倍率は3.2倍で、3年連続で過去最低を記録した。

ただ、慌てる必要はまったくない。AI時代に「先生」は要らないからだ。

まず、インターネットを使えば先生は1人でいい。たとえば、大学の経済学の講義では、定番の教科書に沿って進められることが多い。では、授業で何をやるのかといえば、教科書を読む輪読会だ。先生の役目は講釈師で、自分の考えを話すわけではない。講釈師が各学校につくくらいなら、一流の経済学者の講義をネットで配信したほうがいい。英語が苦手な人はAIで翻訳すればいい。

他の科目も同じである。有機化学の世界には、フィーザー・アンド・フィーザー(ルイス&マリー・フィーザー夫妻)の『Reagents for Organic Synthesis』という古典的テキストがある。私が通った早稲田大学理工学部では、原書の輪読会をひたすらやっていた。先生は学生に訳させて、「みなさん、わかりましたか」「そこの訳は違います」と確認するだけ。化学というより英語の授業のようだった。

私は大学1年のときに運輸省(当時)の通訳案内士免許を取るくらい英語ができたから、斜め読みで理解できた。退屈な授業に出席するくらいなら、大学外で別の経験を積むほうがよほど勉強になる。私はJTBのツアーガイドとして、英語を使って外国人と触れ合った。そのときの人脈や経験は代えがたいものだと実感している。

高等教育に限らない。初等中等教育にも、それぞれの領域で第一人者の先生がいる。そうした先生に英語で授業をしてもらえばいいのだ。

言語の壁の心配はいらない。マレーシアのマハティール首相のアドバイザーをしていた当時、マレーシアで国語論争が起きた。英語教育に力を入れないと世界から遅れてしまうが、マレー語を軽視するとイスラム教勢力が反発する。相談を受けた私は、「学校に決めさせればいい」と提案した。

すると、ほとんどの学校が物理や数学を英語で、国語と宗教をマレー語で教えるようになった。英語で物理や数学を教えるために、オーストラリアから先生も呼び込んだ。その結果、子どもたちは2つの言語で育ってバイリンガルになっていった。英語を教えるのではなく英語で教える。いまやマレーシアは、子どもを安価に語学留学させられ、バイリンガルの教育を受けられる国として日本でも人気がある。

(構成=村上 敬)

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