「心の境界線」を意識してみる

③バウンダリー……自分と他人を分けて考えられているか

最近、産業保健の現場でもよく耳にするようになった言葉に「バウンダリー(自他境界)」があります。自分と他者との間にある見えない境界線のことで、どこまでが自分の責任で、どこからが相手の領域かを区別する線引きを指します。

ビジネスパーソンの描かれた最後のジグソーパズルピース
写真=iStock.com/tadamichi
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バウンダリーは心理学の言葉としては比較的新しいものですが、私はこれを、これまで使われてきた「精神的自立」という言葉とほぼ同じものだと理解しています。自分の感情や人生の責任は自分で引き受けつつ、相手の感情や責任までは背負い込まない。この線引きができているかどうかが、働く人のメンタルの強さ、消耗しやすいか否かに直結していると、面談を重ねるほどに私は感じます。

バウンダリーのバランスが良い人は、自分の意見を持ちながらも相手の考えを尊重でき、必要に応じて距離感を調整できます。自分が頑張っているからといって、部下や同僚も頑張るのが当然とは考えません。また、その逆も然りです。

他人に振り回されやすい人

一方でバウンダリーが緩すぎる人は、他人の機嫌や問題に振り回されやすい傾向があります。断りたい仕事も断れず、頼まれると全部引き受けてしまい、自分の都合よりも職場の雰囲気に合わせた働き方をしがちです。

また、自分のキャパシティを超えて仕事を引き受けた結果、本来やるべき重要な業務が後回しになったり、同僚や部下の失敗まで「自分の教え方が悪かったのだ」と過剰に背負い込み、責任の所在が曖昧なグレーゾーンの仕事に時間を奪われがちです。

バウンダリーが硬すぎる人は、他人を信用できず壁を作りすぎて、周囲と深く関わることを避けてしまいます。一人で仕事を背負い込みすぎます。このようにバウンダリーは極端になると、働く上での消耗につながります。

両者とも、ある日突然、体調を崩して休職に至るケースを、私は何度も見てきました。

自分と相手は違う人間であり、感情も思考も別のものである。異なって当たり前である。この当たり前の認識を難しく考えずに持てるかどうかが、社会人としての精神的自立の成熟度を左右している(つまりその人のバウンダリーのバランスの良さを示している)と私は思います。